日本学術振興会特別研究員とは?東京大学の採用状況と研究者を目指すための準備
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今回のテーマは「日本学術振興会特別研究員と東京大学における採用状況」です。
大学院への進学、特に博士課程への進学を考えている方であれば、「学振」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
学振とは、日本学術振興会特別研究員の通称です。将来の学術研究を担う若手研究者が研究に集中できるよう、研究奨励金や研究費を支給する制度です。
博士課程の学生にとって、学振への採用は経済的な支援を受けられるだけでなく、自分の研究計画が外部の審査で評価された実績にもなります。そのため、研究者を目指す大学院生にとって重要な目標の一つとなっています。
この記事では、日本学術振興会特別研究員の主な区分と、2025年5月1日現在の東京大学における在籍状況、研究科別の特徴、申請に向けて準備したいことを解説します。
日本学術振興会特別研究員とは
日本学術振興会特別研究員は、優れた研究能力を持つ若手研究者を支援する制度です。
博士課程在学者を対象とする区分には、DC1とDC2があります。DC1は博士課程への進学時期に合わせて応募する区分で、DC2は博士課程に在学している人が応募する区分です。
採用されると、博士課程の学生でありながら研究奨励金を受け取り、自分の研究に必要な費用として特別研究員奨励費を申請できます。
博士号取得後の若手研究者を対象とするPD、出産や育児による研究中断からの復帰を支援するRPD、海外の研究機関で長期間研究する若手研究者を支援するCPDなどの区分もあります。
対象者や申請条件、支給額、採用期間は区分によって異なります。応募を考える場合は、自分がどの区分に該当するかを早めに確認することが大切です。
東京大学には1,188名の特別研究員が在籍
2025年5月1日現在、東京大学に在籍する日本学術振興会特別研究員は、合計1,188名です。
内訳は、DC1が520名、DC2が465名、PDが175名、RPDが23名、CPDが5名となっています。
博士課程在学者を対象とするDC1とDC2だけでも、合計985名に達します。東京大学では、多くの博士課程学生が学振の支援を受けながら研究に取り組んでいることがわかります。
ただし、東京大学に進学すれば自動的に学振へ採用されるわけではありません。研究分野ごとに全国の応募者と比較され、研究計画の内容やこれまでの研究実績、研究者としての将来性などをもとに審査されます。
理学系研究科ではDC採用者が201名
研究科別にDC1とDC2の在籍状況を見ると、理学系研究科では合計201名が特別研究員として在籍しています。
内訳は、DC1が119名、DC2が82名です。東京大学の研究科の中でも、特に多くの採用者がいます。
理学系研究科では、物理学、天文学、地球惑星科学、化学、生物科学など、自然界の基本的な仕組みを明らかにする研究が行われています。
学振の申請では、すぐに社会で使える成果だけが評価されるわけではありません。基礎研究であっても、学術的にどのような新しさがあり、分野の発展にどう貢献するのかを明確に説明することが重要です。
工学系研究科では176名が採用
工学系研究科では、DC1が78名、DC2が98名で、合計176名が在籍しています。
工学系研究科では、材料、機械、電気、建築、都市、航空宇宙、エネルギー、バイオエンジニアリングなど、社会と関わりの深い研究が行われています。
工学分野の研究計画では、新しい技術を開発することだけでなく、既存の研究と比べて何が新しいのか、どのような方法で検証するのか、実際に研究期間内で実施できるのかを具体的に示す必要があります。
社会的な意義が大きいテーマであっても、研究目的や方法が曖昧では評価されにくいため、技術的な課題と学術的な問いを分けて整理することが大切です。
文系・学際系からも多くの採用者が出ている
学振は理系の研究者だけを対象とした制度ではありません。東京大学では、文系や学際系の研究科からも多くの博士課程学生が採用されています。
総合文化研究科では、DC1が56名、DC2が49名で、合計105名です。人文社会系研究科では、DC1が44名、DC2が31名で、合計75名となっています。
総合文化研究科では、言語、文化、地域、国際社会、自然科学などを横断する研究が行われています。人文社会系研究科では、哲学、歴史、文学、言語学、社会学などの専門分野を深く研究します。
そのほか、教育学研究科では24名、経済学研究科では9名がDC1またはDC2として在籍しています。
文系研究では、大規模な実験設備を使わない場合もありますが、研究資料の独自性、問いの新しさ、調査方法の妥当性などが厳しく問われます。専門外の審査者にも伝わる文章を書く力が重要です。
新領域・農学・医学でも幅広く採用されている
新領域創成科学研究科では、DC1が26名、DC2が42名で、合計68名です。
新領域創成科学研究科では、物質、エネルギー、生命、医療、環境、国際協力など、複数の学問分野を組み合わせた研究が行われています。
農学生命科学研究科では合計59名、医学系研究科では合計56名のDC採用者が在籍しています。
生命、食料、環境、病気、医療などの研究では、社会的な重要性だけでなく、研究対象、使用するデータ、実験方法、倫理面への配慮まで具体的に示す必要があります。
特別研究員奨励費は1,289件、年間14億9,000万円
学振に採用された特別研究員は、生活費に相当する研究奨励金に加え、研究を進めるための特別研究員奨励費を申請できます。
東京大学が受け入れている特別研究員奨励費は1,289件で、年間の受入額は14億9,000万円、つまり1,490百万円です。
この研究費は、調査や実験に必要な物品の購入、資料収集、学会発表、研究成果の公開などに使われます。
ただし、採用者全員へ同じ金額が自動的に配分されるわけではありません。研究計画や必要経費を記載した申請書を提出し、審査を受ける必要があります。
学振申請では研究計画を他分野の人にも伝える
学振の申請では、自分の研究分野に詳しい人だけが審査するとは限りません。
そのため、専門用語を並べるだけではなく、研究の背景、未解決の問題、研究目的、方法、独自性、期待される成果を順序立てて説明する必要があります。
例えば、「この研究は重要です」と書くだけでは不十分です。これまでの研究で何が明らかになっており、何がまだわかっていないのか、自分の研究によってどこまで明らかにできるのかを具体的に示します。
研究期間内に実施できる計画になっているかも重要です。大きな目標だけを掲げるのではなく、年度ごとの調査や実験の内容、想定される問題と対応方法まで整理しましょう。
学振への準備は修士課程から始まる
DC1を目指す場合、博士課程へ進学する前の段階で申請準備を進める必要があります。
そのため、修士課程に入学してから研究テーマを考え始めるのではなく、院試の段階から研究の背景や目的を整理しておくことが大切です。
大学院入試で作成する研究計画書と、学振の申請書は同じものではありません。しかし、先行研究を読み、自分の問いを明確にし、研究方法を具体化するという基本は共通しています。
修士課程では、学会発表、論文執筆、調査や実験の経験を積み、自分が研究を実行できることを示せるようにしておきましょう。
また、過去の採用申請書を参考にするだけでなく、指導教員や先輩から意見をもらい、何度も修正することが重要です。
東京大学の採用者数だけで進学先を決めない
東京大学には多数の学振特別研究員が在籍していますが、採用者数が多いという理由だけで研究科や研究室を選ぶのはおすすめできません。
研究分野によって博士課程の学生数が異なるため、採用者数が多い研究科ほど個人の採用確率が高いとは限りません。
進学先を選ぶ際は、指導教員の専門、研究設備、研究室の指導体制、修了生の進路、自分の研究テーマとの相性を確認しましょう。
学振への申請支援についても、研究室内で申請書を読んでもらえる機会があるか、過去にどのような指導が行われてきたかを研究室訪問で聞いておくと参考になります。
まとめ
2025年5月1日現在、東京大学には、日本学術振興会特別研究員が1,188名在籍しています。
内訳は、DC1が520名、DC2が465名、PDが175名、RPDが23名、CPDが5名です。博士課程在学者を対象とするDC1とDC2だけでも985名に達します。
研究科別では、理学系研究科が201名、工学系研究科が176名、総合文化研究科が105名、人文社会系研究科が75名、新領域創成科学研究科が68名など、文系・理系を問わず多くの採用者がいます。
学振への採用を目指すためには、研究テーマの重要性だけでなく、学術的な新しさ、具体的な研究方法、実現可能性をわかりやすく説明する必要があります。
研究者を目指して博士課程への進学を考えている方は、大学院入試の研究計画書を作成する段階から、自分の研究を他分野の人にも説明できるよう準備を進めましょう。
※日本学術振興会特別研究員の区分、在籍者数、研究奨励金、特別研究員奨励費、申請条件、採用期間などは年度によって変更される場合があります。最新の制度や募集内容については、必ず日本学術振興会および東京大学の公式サイトでご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


