アドミッション・ポリシーから読み解く横浜国立大学大学院が求める学生像と入試準備
横浜国立大学大学院を目指している方の中には、まず過去問題を解いたり、専門書を読み始めたりしている方も多いのではないでしょうか。もちろん、筆記試験の対策や専門知識の習得は重要です。
しかし、研究計画書や志望理由を作成する前に確認しておきたいものがあります。それが、各学府や専攻が公開しているアドミッション・ポリシーです。
アドミッション・ポリシーとは、大学院がどのような知識、能力、意欲を持つ学生を受け入れたいと考えているのかを示した方針です。横浜国立大学大学院では、学府や専攻ごとに教育目標や求める学生像が示されています。
この記事では、理工学府、環境情報学府、都市イノベーション学府、国際社会科学府などを例に、横浜国立大学大学院が求める学生像と、入試に向けて準備しておきたいことを解説します。
大学院入試でアドミッション・ポリシーが重要な理由
大学院入試では、単に筆記試験で高い点数を取れば合格できるとは限りません。研究計画書や志望理由書、面接などを通じて、受験生の研究内容と専攻の教育方針が合っているかも確認されます。
教員が見ているのは、専門知識の量だけではありません。入学後に研究を継続できる基礎力があるか、自分で課題を見つけられるか、研究成果を社会や学問の発展に生かそうとする姿勢があるかなども重要です。
アドミッション・ポリシーには、こうした評価の方向性が表れています。出願書類を作成する前に読み込むことで、大学院側が重視している能力と、自分の経験や研究テーマを結び付けやすくなります。
ただし、アドミッション・ポリシーの文章をそのまま研究計画書や志望理由書へ書き写すだけでは不十分です。自分の経験や問題意識をもとに、なぜその方針に共感したのか、入学後にどのような研究を行いたいのかを具体的に説明する必要があります。
理工学府が求める基礎学力と研究への姿勢
理工学府には、機械・材料・海洋系工学専攻、化学・生命系理工学専攻、数物・電子情報系理工学専攻などがあり、基礎科学から応用工学まで幅広い研究が行われています。
理工系の大学院入試では、学部段階で学んだ数学、物理、化学、情報、工学などの基礎知識が重要になります。研究では高度なテーマを扱いますが、その土台となる基礎学力がなければ、論文を読んだり実験結果を分析したりすることが難しいためです。
また、既に答えが分かっている問題を解く力だけでなく、未知の課題に対して仮説を立て、検証方法を考える力も求められます。
研究計画書では、「最先端の研究をしたい」と書くだけではなく、どのような問題を対象とし、どのような方法で明らかにしたいのかを説明しましょう。学部の卒業研究、実験、プログラミング、設計などの経験がある場合は、その経験が大学院での研究にどうつながるのかを具体的に示すことが大切です。
環境情報学府が重視する文理融合の視点
環境情報学府では、人工環境、自然環境、情報環境に関わる幅広い研究が行われています。環境問題や情報社会の課題は、一つの専門分野だけでは解決しにくいため、複数の視点から考える姿勢が重要になります。
例えば、災害情報を研究する場合、情報システムの技術だけでなく、住民が情報をどのように受け取るのか、自治体がどのように活用するのかといった社会的な視点も必要です。
また、自然環境の保全を研究する場合も、生態系の調査だけでなく、地域産業や行政制度との関係を考えることがあります。
そのため、環境情報学府を志望する場合は、自分の専門分野を明確にしたうえで、異なる分野の知識をどのように取り入れるのかを考えておきましょう。
研究計画書では、「文理融合に関心がある」という抽象的な表現だけでなく、自分の研究に必要な分野を具体的に挙げることが重要です。例えば、情報科学と防災政策、環境工学と地域経済、メディア研究と心理学など、研究課題に応じた組み合わせを示すと説得力が高まります。
都市イノベーション学府が求める創造性と実践力
都市イノベーション学府では、建築、都市基盤、地域社会、都市文化などを対象とした研究が行われています。都市が抱える問題を、工学と人文社会科学の両面から考えることが特徴です。
都市の問題には、老朽化したインフラ、防災、人口減少、住宅、交通、地域コミュニティ、文化の継承など、さまざまなテーマがあります。
こうした問題を研究するためには、文献を読むだけでなく、現地調査、インタビュー、データ分析、設計、提案などを通じて、現実の課題と向き合う姿勢が求められます。
都市イノベーション学府を志望する場合は、自分がどの地域や都市問題に関心を持っているのかを明確にしましょう。例えば、「地方都市の空き家問題を研究したい」という場合は、対象とする地域、調査する内容、利用する資料やデータまで考えておくと、研究計画が具体的になります。
建築やデザインに関わる分野では、作品や活動実績が評価材料になる場合もあります。ポートフォリオなどが必要な場合は、募集要項を早めに確認し、自分の考え方や制作過程が伝わるように準備しましょう。
国際社会科学府が重視する専門性と社会への関心
国際社会科学府では、経済学、経営学、国際経済法学などの分野を学びます。社会や企業、国際関係が抱える課題を分析し、専門知識を活用して解決策を考える力が求められます。
経済学を志望する場合は、経済理論だけでなく、統計やデータ分析の基礎も重要です。経営学では、企業や組織が抱える具体的な課題と、先行研究を結び付けて考える必要があります。
国際経済法学では、法学や政治学の知識に加え、国際社会の問題に対する関心や、将来の進路を具体的に考えているかも大切になります。
社会人受験生の場合は、実務経験を並べるだけではなく、仕事の中で感じた問題をどのように研究課題へ発展させるのかを説明しましょう。実務上の悩みと学術研究は同じではないため、先行研究や理論を調べ、研究として扱える問いに整理する必要があります。
アドミッション・ポリシーを研究計画書に生かす方法
研究計画書では、自分の研究テーマと志望する学府の特徴がどのようにつながっているのかを示すことが重要です。
まず、アドミッション・ポリシーから、基礎学力、専門性、課題発見力、国際性、実践力など、重視されている要素を読み取ります。そのうえで、自分の学習経験、卒業研究、仕事、資格、活動実績などの中から、該当する経験を整理しましょう。
例えば、学際的な視点が求められている場合は、複数分野に興味があると書くだけでは足りません。自分の研究課題を解決するために、どの分野の知識が必要なのかを説明します。
社会への貢献が重視されている場合も、「社会に役立てたい」という表現だけで終わらせず、研究成果を誰がどのように活用できるのかまで考えることが大切です。
面接では志望理由を自分の言葉で伝える
面接では、「なぜ横浜国立大学大学院なのか」「なぜこの学府や専攻なのか」「なぜこの教員のもとで研究したいのか」といった質問が想定されます。
回答を準備する際は、アドミッション・ポリシーの表現を暗記するのではなく、自分の研究テーマや将来像と結び付けて説明できるようにしましょう。
例えば、環境情報学府を志望する場合は、環境と情報を横断して学べるからという理由だけでは十分ではありません。自分の研究課題に情報技術と社会的な視点の両方が必要であり、それを学べる教員や授業があることまで説明すると、志望理由が具体的になります。
面接官から研究方法や基礎知識について質問されることもあります。アドミッション・ポリシーの理解に加えて、過去問題や募集要項を確認し、専門科目や口述試験の対策も並行して進めましょう。
求める学生像を理解して入試準備を進めよう
横浜国立大学大学院のアドミッション・ポリシーには、各学府や専攻が重視する能力や姿勢が示されています。
理工学府では基礎学力と未知の課題へ挑む力、環境情報学府では複数分野を組み合わせる視点、都市イノベーション学府では現実の都市問題に向き合う実践力、国際社会科学府では専門知識を社会課題へ生かす姿勢などが重要になります。
ただし、求める学生像に無理に自分を合わせる必要はありません。大切なのは、自分の経験や関心が、志望する学府の教育や研究とどこで重なるのかを具体的に整理することです。
アドミッション・ポリシー、募集要項、教員の研究内容、過去問題を確認し、研究計画書と面接の回答に一貫性を持たせましょう。大学院側が求める学生像を理解することが、横浜国立大学大学院の入試準備を進める第一歩になります。
※アドミッション・ポリシー、専攻構成、募集要項、試験内容などは年度によって変更される場合があります。必ず最新の公式サイトをご確認ください。
志樹舎
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


