社会人の学び直しを支援|横浜国立大学大学院のリスキリング特別入試と社会人特別選抜

仕事を続ける中で、「新しい専門知識を身につけたい」「今後のキャリアを考えて大学院で学び直したい」と感じている方もいるのではないでしょうか。

現在は、AIやデータ活用、半導体、経営、地域課題など、幅広い分野で知識の更新が求められています。その一方で、社会人にとっては、仕事を続けながら大学院へ通えるのか、入試対策の時間を確保できるのかといった不安もあります。

横浜国立大学大学院では、こうした社会人の学び直しを支えるため、リスキリング特別入試や社会人特別選抜、社会人専修コース、履修証明プログラムなど、複数の制度が用意されています。

この記事では、経済学専攻、先進実践学環、経営学専攻、理工学府を中心に、社会人が利用できる入試制度や学び方、受験対策のポイントを解説します。


経済学専攻のリスキリング特別入試

横浜国立大学大学院の国際社会科学府経済学専攻では、社会人の学び直しを目的としたリスキリング教育が行われています。

その一つが、2023年4月に新設された社会人向けコースのリスキリング特別入試です。経済学の理論とデータサイエンスを組み合わせ、社会や企業が抱える課題を分析できる人材の育成を目指しています。

例えば、企業の売上データを使って需要を予測したり、地域の人口や雇用データから政策の効果を検証したりする研究が考えられます。

単に統計ソフトの使い方を覚えるのではなく、経済学の考え方を基礎にして、どのデータを使い、どのような方法で分析するのかを学ぶ点が特徴です。

博士課程前期だけでなく、博士課程後期でも社会人向けの学びが案内される場合があります。実務でデータ分析を担当している方や、政策、金融、経営企画などの分野で専門性を高めたい方にとって、検討しやすい選択肢です。


経済学とデータサイエンスを学ぶ意味

社会人がデータサイエンスを学ぶ場合、分析技術だけを身につけても、実務で十分に活用できるとは限りません。

例えば、売上が減少していることがデータから分かったとしても、その原因が価格、競合、消費者行動、景気などのどこにあるのかを考える必要があります。

経済学の理論を学ぶことで、数字の変化を社会や市場の仕組みと結び付けて考えられるようになります。

研究計画では、「データサイエンスを学びたい」と書くだけでなく、どのような業務上の課題を、どのデータと手法を使って分析したいのかを具体的に示しましょう。

例えば、「小売業の購買データを用いて価格変更が顧客行動に与える影響を分析する」といった形まで絞り込むと、研究の目的が伝わりやすくなります。


先進実践学環の社会人特別選抜

先進実践学環は、一つの専門分野に限定せず、複数の分野を組み合わせながら社会課題を研究する修士課程です。

一般選抜とは別に、社会人を対象とした社会人特別選抜が実施される場合があります。

企業、行政、教育、医療、地域活動などで得た問題意識を大学院へ持ち込み、理論や研究方法を使って検証できる点が特徴です。

例えば、地方企業の人材不足を研究する場合、人事管理だけでなく、地域経済、人口移動、デジタル技術などの視点を組み合わせることが考えられます。

ただし、幅広い分野を学びたいという理由だけでは、研究計画として十分ではありません。自分の課題を解決するために、なぜ複数分野の知識が必要なのかを説明することが重要です。


短期間で学べる社会人向けプログラム

先進実践学環では、正規の修士課程とは別に、社会人向けの履修証明プログラムや科目等履修生制度が案内されることがあります。

過去には、応用AI学修証明プログラムや、半導体・量子集積エレクトロニクス総合講座などが開講されています。

応用AI学修証明プログラムでは、AIを業務や社会課題に活用するための知識を学びます。半導体・量子集積エレクトロニクス総合講座では、次世代産業に関わる半導体や量子技術について、基礎から専門的な内容まで学べる場合があります。

修士課程へ進学する時間を確保しにくい方にとって、特定の分野を集中的に学べる点は大きな利点です。

ただし、履修証明プログラムを修了しても、修士号を取得できるわけではありません。学位取得が目的なのか、業務に必要な知識の習得が目的なのかを整理して選びましょう。


横浜ビジネススクールで経営を学ぶ

国際社会科学府の経営学専攻には、社会人専修コースである横浜ビジネススクール、通称YBSがあります。

YBSでは、企業や団体などで実務経験を積んだ社会人が、経営学の理論と自身の業務上の課題を結び付けて学びます。

例えば、人材育成、新規事業、マーケティング、組織改革、財務戦略など、仕事の中で直面した問題を研究テーマに発展させることができます。

異なる業界や職種の社会人と議論できる点も特徴です。自社の中では当然だと思っていた考え方を、別の業界の事例と比較することで、新しい視点を得られる可能性があります。

社会人専修コース専用の募集要項が公開され、入試説明会が開催される年度もあります。志望する方は、経営学専攻の公式サイトを早めに確認しましょう。


理工学府で働きながら博士号を目指す

理工学府では、企業などで研究開発に携わる社会人が、仕事を続けながら博士課程後期へ進学するための情報が案内されています。

企業で行っている研究開発を、大学院でより深く検証したい方や、博士号の取得を通じて専門性を高めたい方にとって選択肢になります。

ただし、会社の研究内容をそのまま博士論文にできるとは限りません。社外秘情報の扱い、研究成果の公表、知的財産権などについて、勤務先と大学の双方に確認する必要があります。

また、博士課程では、数年間にわたって研究を継続し、論文として成果をまとめることが求められます。仕事との両立だけでなく、研究時間、指導方法、学会発表、論文投稿の計画まで考えておきましょう。


社会人入試では職務経験を研究に変える

社会人向けの特別選抜では、一般入試と比べて、職務経験や研究計画が重視される場合があります。

そのため、これまでどのような仕事をしてきたかを並べるだけでは不十分です。実務経験を通じて、どのような問題に気づき、それを大学院でどのように研究したいのかを説明する必要があります。

例えば、「営業成績を改善したい」という内容では、会社の業務改善案にとどまります。研究としては、顧客との関係、営業担当者の行動、評価制度など、どの要因を対象にするのかを絞り込みます。

さらに、アンケート、インタビュー、統計分析、事例比較など、どの方法で検証するのかを考えましょう。

実務の課題を、他の企業や社会にも応用できる問いへ広げることが、研究計画を作る際の重要なポイントです。


入試説明会で確認したいこと

経済学専攻、先進実践学環、経営学専攻などでは、社会人向けの入試説明会が行われる場合があります。

説明会では、入試制度だけでなく、授業の時間帯、研究指導、仕事との両立、修了までの学修負担などを確認しましょう。

社会人にとっては、平日夜間や休日に授業があるか、オンラインで受講できる科目があるか、研究指導をどのように受けるのかが重要です。

また、自分の研究テーマに近い教員がいるか、出願前に教員への相談が必要かも確認してください。

質問する際は、「働きながら通えますか」と広く聞くよりも、自分の勤務時間や通学条件を前提に、具体的に確認すると判断しやすくなります。


仕事と入試対策を両立するスケジュール

社会人受験では、限られた時間の中で準備を進める必要があります。

まずは、募集要項が公開される前から、研究テーマの整理と専門分野の学び直しを始めましょう。

平日は30分から1時間程度を文献の確認や英語対策に使い、休日に研究計画書や過去問へまとまった時間を充てる方法があります。

出願直前に研究計画書を書き始めると、先行研究や研究方法を十分に検討できません。少なくとも数か月前から、自分の問題意識を文章にしておくことが大切です。

勤務先へ進学を伝える必要がある場合は、授業や試験で休暇が必要になる時期も含めて、早めに相談しましょう。


自分に合う学び方と入試制度を選ぼう

横浜国立大学大学院では、経済学専攻のリスキリング特別入試、先進実践学環の社会人特別選抜、横浜ビジネススクール、理工学府の博士課程など、社会人向けの複数の選択肢があります。

また、修士号や博士号の取得を目指す正規課程だけでなく、履修証明プログラムや科目等履修生として学ぶ方法もあります。

重要なのは、大学院へ行くこと自体を目的にしないことです。どの知識を身につけたいのか、どの課題を研究したいのか、修了後に学びをどう生かすのかを整理しましょう。

そのうえで、募集要項、出願資格、授業時間、研究指導、学費、仕事との両立方法を確認し、自分に合う制度を選ぶことが大切です。

実務経験を具体的な研究課題へ変え、学び直す目的を明確にすることが、社会人入試の合格に向けた第一歩になります。


※リスキリング特別入試、社会人特別選抜、社会人専修コース、履修証明プログラム、科目等履修生制度の内容や募集時期は年度によって変更される場合があります。必ず最新の公式サイトと学生募集要項をご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。