
大学院で得られるのは学位だけではない|研究を通じて身につく力
- 1. 大学院での研究は、答えの決まっていない問いに向き合うこと
- 2. 身につく力① 問題を発見し、問いを立てる力
- 3. 身につく力② 情報を集め、その信頼性を判断する力
- 4. 身につく力③ 根拠に基づいて考え、仮説を検討する力
- 5. 身につく力④ 長期的な課題に取り組み、計画を修正する力
- 6. 身につく力⑤ 予想外の結果を受け止め、考え直す力
- 7. 身につく力⑥ 自分の考えを論理的に説明する力
- 8. 身につく力⑦ 他者の意見を受け止め、考えを深める力
- 9. 身につく力⑧ 複雑な内容を文章にまとめる力
- 10. 研究を通じて身につく力は仕事でも役立つ?
- 11. 研究経験を就職活動で伝えるには?
- 12. 大学院に進学すれば必ず能力が身につくわけではない
- 13. まとめ|大学院で得られるのは研究成果だけではない
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。
大学院への進学を考えたとき、「修士号を取得すると、どのような力が身につくのだろう」「大学院での研究経験は、将来の仕事に役立つのだろうか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
大学院では、専門分野の知識を深めながら、自分で研究課題を設定し、調査や分析を進めていきます。
その過程では、研究テーマがなかなか決まらなかったり、必要な資料が見つからなかったり、予想と異なる結果が出たりすることもあります。
しかし、こうした試行錯誤こそが、大学院での学びを特徴づける重要な経験です。
志樹舎では、大学院教育の価値は、専門知識や学位の取得だけでは測れないと考えています。
自分で問いを立て、根拠を探し、他者との議論を通じて考えを深めていく。その過程で培われる姿勢や思考力も、大学院で得られる大切なものです。
今回は、大学院での研究活動を具体的にたどりながら、学位取得以外にどのような力を身につけられるのかを解説します。
大学院での研究は、答えの決まっていない問いに向き合うこと
大学院での研究を理解するために、まず知っておきたいのが、授業で知識を学ぶことと、研究に取り組むことの違いです。
授業では、教科書や参考書などを使いながら、すでに明らかになっている知識や理論を学ぶことが一般的です。
一方、研究では、これまでの研究成果を踏まえながら、まだ十分に明らかになっていない問題について考えていきます。
例えば、「なぜ同じ研修を受けても、社員によって学習成果が異なるのか」という疑問を持ったとします。
この疑問に答えるためには、研修内容だけでなく、社員の経験や学習意欲、職場環境など、さまざまな要素を検討する必要があります。
また、すでに関連する研究が行われている可能性もあるため、先行研究を調べなければなりません。
研究とは、思いついた答えを証明するための活動ではありません。
資料やデータを集め、適切な方法で分析し、自分の考えがどこまで根拠に支えられているのかを確かめる活動です。
そして、十分な根拠が得られなければ、結論を急がず、問いそのものを見直すことも求められます。
正解を覚えることから、正解がまだわからない問題に向き合うことへ。この変化は、大学院での学びを理解するうえで重要なポイントです。
身につく力① 問題を発見し、問いを立てる力
大学院での研究は、研究したいテーマを考えるところから始まります。
例えば、「日本の教育について研究したい」と考えた場合、そのままでは研究対象が広すぎます。
教育といっても、学校教育、家庭教育、教育政策、学習方法など、さまざまな分野があるからです。
そこで、「中学生の家庭学習時間と学習意欲には、どのような関係があるのか」といった具体的な問いへと整理していきます。
ただし、問いを具体的にすれば、それだけで研究として成立するわけではありません。
すでに何が明らかになっているのか、必要な資料を集められるのか、限られた期間で取り組めるのかなども確認する必要があります。
このように、漠然とした関心を研究可能な問いへと変えていくことは、研究活動の重要な部分です。
志樹舎では、大学院で学ぶうえで、自分なりの問いを持つことを大切にしています。
与えられた問題を解くことも重要ですが、そもそも何を問題として捉えるべきなのかを考える力は、研究の出発点になるからです。
仕事においても、「売上が伸びない」「社員の定着率が低い」といった問題に直面することがあります。
その際、目に見える現象だけで判断せず、何が問題の本質なのかを整理する姿勢は、研究で培った考え方と共通する部分があるでしょう。
身につく力② 情報を集め、その信頼性を判断する力
研究課題を設定したら、関連する先行研究や資料を調べます。
教育学の研究であれば、学術論文や専門書、教育に関する調査報告書などを確認することがあります。
経済学の研究では、統計データや過去の研究成果などを調べる場合があります。
ただし、インターネットで検索して見つかった情報を、そのまま研究の根拠として使えるとは限りません。
資料を作成したのは誰なのか、どのような方法で調査されたのか、いつ公表された情報なのかを確認する必要があります。
また、複数の研究で異なる結論が示されている場合には、その違いがどこから生まれているのかを考えることもあります。
研究では、自分の考えに都合のよい情報だけを集めることは適切ではありません。
むしろ、自分の予想と異なる研究結果に出会ったときこそ、その理由を丁寧に検討する必要があります。
情報が簡単に手に入る時代だからこそ、何を信頼し、どこまでを事実として受け止めるのかを判断する力は重要です。

身につく力③ 根拠に基づいて考え、仮説を検討する力
研究では、調査や分析を始める前に、どのような結果が考えられるのかを予想することがあります。
こうした予想を、研究分野や方法によっては仮説と呼びます。
例えば、「社員同士のコミュニケーションが活発な職場ほど、仕事への満足度が高いのではないか」と考えたとします。
この仮説を検討するためには、関連する先行研究を確認し、どのような方法で調査するのかを考える必要があります。
実際に調査した結果、予想した関係が見られない場合もあるでしょう。
そのとき、自分の考えに合う結果だけを取り上げるのではなく、得られた結果をもとに検討し直すことが重要です。
なお、すべての研究が仮説を立てて検証する方法で進められるわけではありません。
文学や歴史学などでは、資料の解釈や比較を中心に研究する場合もあります。
研究方法は異なっても、自分の考えを根拠に基づいて説明する姿勢は、多くの分野で大切にされています。
身につく力④ 長期的な課題に取り組み、計画を修正する力
大学院での研究は、数日で終わるものばかりではありません。
修士論文の作成では、研究テーマの設定から文献調査、資料収集、分析、執筆まで、長い期間をかけて取り組むことが一般的です。
研究を進める中では、予定していた資料が集まらなかったり、調査方法を変更する必要が生じたりすることもあります。
そのため、最初に立てた計画を守るだけでなく、状況に応じて計画を見直すことも重要です。
例えば、調査に協力してもらえる人数が想定より少ない場合には、研究の目的や倫理的な条件を踏まえながら、調査計画を再検討する必要があるかもしれません。
研究を続けるには、計画性だけでなく、予想外の状況に対応する柔軟さも求められます。
こうした経験は、仕事で長期的なプロジェクトに取り組む際にも役立つ可能性があります。
身につく力⑤ 予想外の結果を受け止め、考え直す力
研究活動では、思いどおりに進まないこともあります。
アンケート調査で必要な回答数が集まらなかったり、実験で予想と異なる結果が出たりする場合があります。
また、研究を進める中で、最初に設定した問いが適切ではなかったと気づくこともあるでしょう。
しかし、研究では、予想と異なる結果が出たこと自体が必ずしも失敗とは限りません。
なぜそのような結果になったのかを考えることが、新しい理解につながる場合もあるからです。
志樹舎では、研究において大切なのは、最初から正しい答えを持っていることではなく、自分の考えを検証し、必要に応じて修正できることだと考えています。
大学院では、自分の予想が間違っていたと認めることも、学びの一部になります。
自分の考えに固執せず、根拠に基づいて判断を見直す姿勢は、研究以外の場面でも重要になるでしょう。
身につく力⑥ 自分の考えを論理的に説明する力
大学院では、研究内容を他の人に説明する機会があります。
ゼミで研究の進捗を報告したり、研究発表会で成果を紹介したりすることがあります。
研究発表では、何を明らかにしたいのか、どのような方法で調べたのか、どのような結果が得られたのかを整理して伝える必要があります。
また、聞き手が必ずしも自分と同じ専門知識を持っているとは限りません。
そのため、専門用語を使う場合には説明を加えたり、研究の背景をわかりやすく伝えたりする工夫が必要になります。
さらに、研究発表では質問を受けることもあります。
その際には、自分が説明できることと、まだ明らかになっていないことを区別する姿勢も重要です。
研究で大切なのは、難しい言葉を使って説明することではありません。
自分が何を考え、どのような根拠に基づいて結論を導いたのかを、他者に伝わる形にすることです。

身につく力⑦ 他者の意見を受け止め、考えを深める力
大学院での研究は、一人だけで完結するものではありません。
指導教員から助言を受けたり、他の学生と研究について議論したりする機会があります。
例えば、研究発表で「その調査方法では、別の要因の影響を区別できないのではないか」と指摘されることがあります。
そのような指摘を受けたときには、研究方法を見直したり、分析結果の解釈を慎重に考えたりする必要があります。
もちろん、他の人からの意見をすべて受け入れればよいわけではありません。
指摘された内容が妥当かどうかを検討し、必要に応じて自分の考えを説明することも重要です。
他者と意見が異なることは、必ずしも対立を意味しません。
むしろ、自分にはなかった視点を知り、考えを深める機会になることがあります。
大学院での議論は、自分の意見を守るためだけではなく、よりよい理解に近づくために行うものです。
身につく力⑧ 複雑な内容を文章にまとめる力
修士論文を作成する場合、研究の背景や目的、方法、結果、考察などを、一つの文章としてまとめる必要があります。
研究分野によって論文の構成は異なりますが、読み手が研究内容を理解できるように整理することが重要です。
例えば、研究の目的が曖昧なままでは、なぜその調査を行ったのかが伝わりにくくなります。
また、結果と考察が混ざっていると、実際に確認できた事実と、そこから考えられる解釈の違いがわかりにくくなることがあります。
そのため、論文を執筆する際には、文章全体の構成を考え、必要な情報を適切な順序で説明することが求められます。
さらに、引用した文献を明示し、自分の考えと他の研究者の成果を区別することも重要です。
こうした経験を通じて、複雑な内容を整理し、筋道を立てて文章にまとめる力を磨くことができます。
研究を通じて身につく力は仕事でも役立つ?
大学院での研究経験は、研究職以外の仕事でも役立つ可能性があります。
例えば、企業の企画部門では、市場の状況を調べ、課題を整理し、改善策を検討することがあります。
こうした仕事では、必要な情報を集め、根拠をもとに考える姿勢が求められます。
また、教育現場では、子どもの学習状況を把握し、指導方法を見直すことがあります。
大学院で教育に関する調査や分析を経験していれば、その考え方を生かせる場合もあるでしょう。
ただし、大学院での研究経験が、すべての仕事に直接役立つとは限りません。
仕事では、限られた時間や予算の中で判断したり、複数の関係者と調整したりする必要があるため、研究とは異なる能力も求められます。
研究で身につけた力を仕事に生かすためには、研究経験を振り返り、どのような場面で活用できるのかを考えることが大切です。
研究経験を就職活動で伝えるには?
大学院での研究経験を就職活動で説明する際には、研究テーマだけでなく、研究に取り組む過程を整理しておくとよいでしょう。
例えば、「地域の人口減少について研究しました」と説明するだけでは、具体的にどのような経験を積んだのかが伝わりにくい場合があります。
そこで、「自治体の統計資料を比較し、人口移動の特徴を分析しました」と説明すると、研究で行ったことが具体的になります。
さらに、「資料の定義や集計方法が異なっていたため、比較できる条件を整理しました」と伝えれば、研究中に直面した課題と、その対応についても説明できます。
研究経験を振り返る際には、何を研究したのか、どのような方法を使ったのか、どのような問題があり、それにどう対応したのかを整理してみましょう。
ただし、研究成果を必要以上に大きく見せる必要はありません。
実際に取り組んだ内容を具体的に説明することが、自分の経験を伝えるうえで重要です。
大学院に進学すれば必ず能力が身につくわけではない
ここまで、大学院での研究活動を通じて養われる力について紹介してきました。
しかし、大学院に進学すれば、誰もが同じ能力を身につけられるわけではありません。
研究テーマや研究方法によって、経験できる活動は異なります。
例えば、実験を中心とする研究と、文献調査を中心とする研究では、日々の活動内容が大きく異なります。
また、研究科によって、授業と研究活動の比重や、指導教員との関わり方も異なります。
そのため、大学院でどのような経験を積みたいのかを考え、自分の目的に合った研究環境を選ぶことが大切です。
そして、大学院で得た経験を自分の力として生かすためには、主体的に研究へ取り組み、学んだことを振り返る姿勢が欠かせません。

まとめ|大学院で得られるのは研究成果だけではない
大学院では、専門知識を深めるだけでなく、研究活動を通じてさまざまな力を養う機会があります。
例えば、研究課題を設定する力、情報の信頼性を判断する力、根拠に基づいて考える力、計画を立てて行動する力などです。
また、研究発表や論文執筆を通じて、自分の考えを整理し、他の人にわかりやすく伝える力を磨くこともできます。
こうした能力は、研究職だけでなく、さまざまな仕事や社会生活の中で役立つ可能性があります。
一方、大学院で身につく力は、研究内容や本人の取り組み方によって異なります。大学院に進学するだけで、すべての能力が身につくわけではありません。
志樹舎では、大学院での学びの価値を、学位や研究成果だけで判断する必要はないと考えています。
研究に取り組む中で、自分の考えが間違っていると気づくこともあります。何度も問いを立て直し、思うように進まない時間を経験することもあるでしょう。
しかし、そのような経験を通じて、自分で考え、判断し、学び続ける姿勢を育てることができます。
大学院で得られる大切なものの一つは、誰かが用意した答えを覚える力ではなく、答えが簡単には見つからない問題にも向き合い続ける力なのです。
大学院進学を考えている方は、取得したい学位や学びたい専門分野だけでなく、研究を通じてどのような経験を積みたいのかも考えてみてください。
次回は「大学院に進学して後悔する人はいる?進学前に考えたいこと」をテーマに、大学院進学後に感じやすいギャップや、後悔を減らすための準備について解説します。
※大学院の教育内容、研究指導の方法、修了要件、研究環境などは大学院・研究科によって異なります。最新の情報は、各大学院の公式サイトや募集要項で必ずご確認ください。
志樹舎
では、大学院入試の各種対策に特化した専門性の高いサポートを行っています。
研究計画書から志望理由書・小論文・面接・プレゼン対策まで、どこから手を付けるべきか個別にアドバイスします。
多くの受験生が「もっと早く相談すればよかった」と話されます。
「何から始めればいいか分からない」
「この研究テーマで通用するか不安」
そんな院試受験で迷いや不安がある方は、今すぐ
無料相談
にお申込みください。
※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。


