大学院入試の課題論文には、大きく分けて2つのタイプがあります。

要約型: 「以下の文章を読み、筆者の主張を要約せよ」

論述型: 「〇〇というテーマについて、あなたの考えを論じよ」

この二つの違いを理解せず、要約問題で自分の意見を書いたり、論述問題でテキストのまとめを書いたりすると、評価されなくなってしまいます。
それぞれのタイプで求められる「脳の使い方」と「文章の型」を解説します。

1. 要約型:私は「透明人間」になる

要約問題において、あなたの意見(主観)はノイズになってしまいます。
求められているのは、「筆者の論理構造を、正確に縮小コピーする能力」です。

鉄則: 筆者が使っていない言葉(自分なりの言い換え)を極力避ける。

構成: 「筆者は〇〇と主張している。その根拠としてAとBを挙げている。結論として、××の重要性を説いている。」

ここでは、あなたは透明人間になり、筆者の思考をトレースすることだけに徹してください。「私はこう思う」と書いた瞬間に減点されます。

2. 論述型:私は「裁判官」になる

一方、「論じよ」と言われたら、あなたの立ち位置(ポジション)を明確にする必要があります。
しかし、それは「好き嫌い」や「感想」を書くことではありません。
ある事象に対し、証拠(根拠)に基づいて判決を下す、裁判官のような態度が求められます。

型(PREP法のアカデミック版):

Conclusion(主張): 私は〇〇という説を支持する(または反対する)。

Reason(根拠): その理由は、△△という理論的背景があるからだ。

Evidence(証拠): 実際、××のデータや事例を見ても、それは明らかだ。

Counter-argument(反論への配慮): 確かに□□という指摘もあるが、それは限定的な場面に過ぎない。

Conclusion(再主張): したがって、やはり〇〇であると結論づけられる。

3. 客観で書く文章術

どちらのタイプでも共通するのは、「主観的な表現の排除」です。

× 「かわいそうだと思う」 → ○ 「倫理的な問題がある」

× 「すごい技術だ」 → ○ 「革新的な技術である」

× 「絶対に正しい」 → ○ 「妥当性が高い」

感情言葉を、論理言葉に置き換える。
「熱い想い」は持っていて構いませんが、文章に出す時は「冷たい論理」に変換して出力する。これがアカデミック・ライティングの基本姿勢です。

まとめ:問いを読む

最大の失敗は、出題者が「要約して」と言っているのに論じてしまい、「論じて」と言っているのに要約してしまうことです。
問題文の末尾(〜せよ)を、穴が開くほど見てください。

そこには、教授からの「君の読解力(インプット)を見たいのか、思考力(アウトプット)を見たいのか」というメッセージが隠されています。
その要求に、100%正確に応えること。それが合格への唯一の道です。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。