出願書類の中で、研究計画書と双璧をなす重要書類、それが「志望理由書」です。 しかし、多くの受験生(特に学部生や、初めて受験する社会人)が、ここで勘違いをしてしまいます。

「貴学の自由な校風に惹かれました」 「整った設備と、カリキュラムの充実に魅力を感じました」 「〇〇先生のご指導のもと、一生懸命勉強したいと思います」

これらは「評価にならない記述」になっています。 なぜなら、これらは単なる「感想」であり、あなたがその大学院に入らなければならない「論理的な理由」になっていないからです。

大学院入試における志望理由とは、「私の研究を成功させるためには、世界中で貴学という環境しかあり得ない」という「必然性」を証明することです。 今回は、教授を論理で説得する「3段論法」の型を伝授します。

1. 第1段:研究の「要求仕様」を提示する

いきなり「貴学が好きだ」と書き始めてはいけません。まずは、あなたの研究計画を実行するために、「何が必要なのか(スペック)」を提示します。

「私の研究テーマである『〇〇』を遂行するためには、以下の2つの環境が不可欠である。 第一に、△△理論に基づく定量分析の指導ができる教員がいること。 第二に、大規模なアンケート調査を実施するためのフィールド(提携企業など)を持っていること。」

このように、まずは大学名を一切出さず、「私の研究に必要な条件」を客観的に定義します。

2. 第2段:他大学の「消去」

次に、「なぜ他の大学院ではダメなのか」を(直接的な悪口にならない範囲で)示唆します。

「一般的に、〇〇分野の研究は質的アプローチが主流であり、私が志向する量的アプローチを専門とする研究機関は国内には極めて少ない。私の現在の所属大学においても、この分野の専門家は不在であり、研究遂行に限界がある。」

これにより、「どこでもいいわけではない」「近所だから選んだわけではない」という本気度が伝わります。消去法によって、選択肢を狭めていくのです。

3. 第3段:貴学である「必然性(ベストマッチ)」

最後に、満を持して志望校を登場させます。

「貴学の××研究科には、△△理論の第一人者である□□教授が在籍しており(条件1の合致)、かつ産学連携センターを通じた企業調査のスキームが確立されている(条件2の合致)。 以上のことから、私の研究計画を最も高い水準で完遂できる環境は、貴学をおいて他にないと考え、志望するに至った。」

この「Aが必要だ。他にはない。あなただけが持っている。だから志望する」という流れ。 これが完璧に組まれていれば、教授は「なるほど、うちに来るしかないね」と頷くしかありません。

まとめ:感情ではなく「機能」

大学院を「憧れの場所」として見るのをやめてみましょう。あなたの研究プロジェクトを成功させるための「リソース(資源)の集合体」として見てください。 「この大学のこの機能(先生、設備、データ)を使えば、私の研究は成功する」。 そのクールな視点こそが、研究者としての適性です。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。