
「真理は寒梅のごとし」:小原克博学長が語る、研究者に必要な「挑戦する精神」
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「院試お役立ち記事」をご覧いただき、ありがとうございます。今回のテーマは「小原克博学長のメッセージ」です。
大学院への進学を考えていると、「本当にこの研究テーマでよいのだろうか」「自分に研究を続けられるのだろうか」と不安になることがあります。社会人であれば、仕事を続けながら進学するのか、今の環境を離れて研究に集中するのかという迷いもあるでしょう。他大学の大学院を目指す人にとっては、新しい環境に飛び込むこと自体が大きな決断になることもあります。
そんな大学院受験生にとって、一つのヒントになるのが、同志社大学の小原克博学長が大学院案内の中で紹介している新島襄の言葉です。
「真理は寒梅のごとし」に込められた意味
新島襄が残した言葉に、「真理似寒梅敢侵風雪開」という漢詩があります。「真理は寒梅のごとし。あえて風雪を侵して開く」と読まれる言葉です。
寒梅は、まだ寒さが厳しく、風や雪が残る季節に花を咲かせます。暖かく穏やかな季節を待つのではなく、厳しい環境の中でも花を開く。その姿を、新島襄は真理を求める姿勢に重ねました。この言葉は、新島襄が一人の学生のために書き記したものとされています。
小原学長は、この言葉に込められた「真理」を、社会や時代の流れにそのまま従うのではなく、ときにはそれに抵抗できる力として読み解いています。
研究では、すでに知られていることを覚えるだけでは十分ではありません。「これまで当たり前とされてきた考え方は本当に正しいのか」「別の見方ができるのではないか」と問い直すことも必要です。その意味では、寒梅のように厳しい環境の中でも自分の問いを持ち続ける姿勢は、大学院で研究する人にとって大切な考え方といえるでしょう。
大学院では「まだ答えのない問い」に向き合う
大学院での研究は、学部までの勉強とは少し性質が異なります。もちろん専門分野の知識を身につけることは必要ですが、その先では、まだ十分に明らかになっていない問題に自分自身で取り組むことになります。
たとえば先行研究を調べた結果、「この条件については十分な研究がない」「この対象についてはデータが少ない」「これまでとは違う方法で検証できるのではないか」といった課題が見えてくることがあります。そこから研究上の問いを立て、調査や実験、文献研究などを通して答えを探していきます。
当然、最初から正解が分かっているわけではありません。調査を始めたものの予想した結果が出なかったり、研究を進める途中で仮説を修正したりすることもあります。研究テーマそのものを見直す必要が出てくる場合もあるでしょう。
だからこそ大学院では、決められた道を間違えずに進む力だけではなく、自分で問いを見つけ、分からないことに向き合い続ける力が必要になります。「真理は寒梅のごとし」という言葉は、こうした研究の姿勢にもつながっています。
研究計画書では「何に挑戦するのか」を具体的にする
この考え方は、大学院入試で研究計画書を作成するときにも参考になります。
研究計画書では、「○○について研究したい」という希望だけを書くのではなく、なぜそのテーマを研究する必要があるのかを具体的に示すことが重要です。先行研究では何が明らかになっていて、何がまだ十分に明らかになっていないのか。その中で、自分はどの部分を研究したいのかを整理していきます。
ここでいう「挑戦」は、誰も研究したことのない壮大なテーマを選ぶという意味ではありません。むしろ、自分の問題意識を具体的な研究課題まで絞り込み、既存研究を踏まえたうえで新しい視点を提示することが大切です。
たとえば、「生成AIについて研究したい」だけでは研究テーマとしては広すぎます。「大学教育における生成AIの利用が学生の文章作成能力にどのような影響を与えるのか」のように対象や問題を絞ることで、何を明らかにしたい研究なのかが見えやすくなります。
自分の研究が、これまでの研究に何を付け加えようとしているのか。なぜ今、その問いに取り組む必要があるのか。ここを具体的に説明できるようになると、研究計画書にも説得力が生まれます。
専門性を深めることが、広い社会を見ることにつながる
小原学長のメッセージでは、一つの研究課題を深く掘り下げていくことで、やがて他の分野にもつながる大きな「水脈」にたどり着くことがある、という趣旨も語られています。
大学院では専門性を高めることが求められますが、専門分野だけを見ていればよいというわけではありません。一つの問題を深く研究していくと、社会、経済、文化、倫理、技術など、当初は想定していなかった分野とのつながりが見えてくることがあります。
たとえば環境問題を研究する場合でも、自然科学だけで完結するとは限りません。企業活動や法律、地域社会、国際関係、人々の生活など、さまざまな問題と関係します。AIの研究であれば、情報科学だけではなく、教育、法律、倫理、雇用などの問題につながる可能性があります。
一つの専門分野を深く研究する力と、その研究が社会の中でどのような意味を持つのかを広い視点から考える力。この2つを両立させていくことも、大学院で研究するうえで意識したいポイントです。
不安があるからこそ、自分が研究したい理由を考える
大学院受験を前に不安を感じることは珍しくありません。研究計画書が思うようにまとまらなかったり、先行研究を読んで自分の知識不足を感じたりすることもあります。「自分より詳しい人がたくさんいるのに、大学院へ進んでよいのだろうか」と考えてしまう人もいるでしょう。
そんなときこそ、「なぜ自分はこのテーマを研究したいのか」に戻ってみてください。大学院入試では、最初から完成された研究者であることが求められているわけではありません。これまで何を学び、どのような問題意識を持ち、大学院で何を明らかにしたいのかを整理して伝えることが大切です。
「真理は寒梅のごとし」という言葉が示しているのは、楽な道を選ばずに苦労すること自体が価値なのではなく、簡単には答えが出ない状況でも真理を求め続ける姿勢です。
同志社大学大学院を目指す方は、受験科目や出願書類の準備だけでなく、「自分は大学院で何に挑戦したいのか」「その研究を通して何を明らかにしたいのか」を一度じっくり考えてみてください。それが研究計画書や志望理由を深めるだけでなく、大学院へ進学する意味を自分自身で確認する機会にもなるはずです。
この記事の内容は執筆時点の情報です。大学院案内や入試制度、研究科の情報などは変更される場合があります。受験を検討する際は、必ず同志社大学の公式サイトおよび最新の入試要項をご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。



