
大学院と研究科の違いとは?志望先を探すための基礎知識
院試専門オンライン予備校「志樹舎」が運営する「院試対策ガイド」をご覧いただき、ありがとうございます。
大学院について調べ始めると、「研究科」「専攻」「コース」「研究室」といった言葉が出てきます。「興味のある研究は見つかったけれど、結局どこに出願すればよいのだろう」と戸惑う方もいるのではないでしょうか。
これらは、大学院の教育研究組織や学びの区分、研究活動の場などを表す言葉です。違いを知っておくと、公式サイトや募集要項のどこを読めばよいのかがわかりやすくなります。
ただし、大学院によって組織の構成や名称は異なります。すべてを一度に覚えようとせず、自分が気になっている大学院の案内と照らし合わせながら確認していきましょう。
この記事では、それぞれの言葉の意味を整理し、志望先を探すときに確認したいポイントを解説します。
大学院と研究科は何が違う?まずは全体像をつかもう
大学院は、学部での学びなどを基礎に、高度な専門知識や研究方法を身につけるための教育研究の場です。研究科は、その大学院に設けられる教育研究上の組織の一つです。
例えば、ある大学の大学院に、文学研究科、経済学研究科、理工学研究科が設置されているとします。この場合、大学院という全体の中で、それぞれの研究科が専門分野に応じた教育や研究を担っています。
大学名だけでは、そこで何を学べるのかまではわかりません。「この大学の大学院に進学したい」と思ったら、次に、自分の関心に近い研究科を調べる必要があります。
ただし、研究科の名称と学問分野は、必ずしも一対一で対応しているわけではありません。心理学を研究できる場所が、心理学研究科ではなく、文学研究科や人間科学研究科に置かれていることもあります。
また、複数の分野を横断する研究科や、「学府」など別の名称を使う大学もあります。名称は入口として捉え、その組織がどのような教育や研究を行っているのかまで確認しましょう。
専攻とコースは、学ぶ分野や教育内容を示す区分
研究科の中には、「専攻」が設けられている場合があります。専攻は、教育研究を行う専門分野などに応じた組織です。
例えば、文学研究科の中に日本文学専攻や史学専攻があれば、それぞれの専攻で専門的な学びや研究に取り組みます。理工学研究科であれば、機械工学や情報科学などに関係する専攻が置かれていることもあります。
ただし、一つの研究科に一つの専攻だけを置く場合もあるため、「専攻は必ず細かく分かれている」と考える必要はありません。
一方、「コース」は、研究分野や教育目的、学び方などを示す区分として使われます。例えば、一つの専攻の中に、扱う研究領域が異なる複数のコースを設ける場合があります。
コースの位置づけは大学院によって異なり、出願時に選ぶ場合もあれば、入学後に選択する場合もあります。授業科目や修了要件がコースごとに異なることもあるため、名称だけで判断しないことが大切です。
基本的には「大学院の中に研究科があり、その中に専攻やコースが置かれる場合がある」と捉えておくと、案内を読み進めやすくなるでしょう。ただし、すべての大学院が同じ構成になっているわけではありません。

研究室やゼミは、具体的な研究と指導が行われる場
研究科や専攻が教育研究上の組織を示すのに対し、「研究室」は、教員や学生が研究に取り組む場所や集まりを指す言葉として使われます。専攻やコースと必ず同じように並ぶ組織区分ではありません。
例えば、理工系では、ある教員の研究室に所属し、実験や分析、共同研究などに取り組むことがあります。文系でも研究室という言葉は使われますが、ゼミや演習、個別の研究指導を中心に学ぶ場合もあります。
大学院選びで確認したいのは、研究室の名前よりも、そこで何を研究し、どのような指導を受けられるかです。同じ分野でも、扱うテーマや研究方法、研究活動の進め方は異なります。
例えば、環境問題に関心がある場合でも、実験によって物質の性質を調べる研究と、住民への聞き取りから地域政策を考える研究では、必要な準備や日々の活動が変わります。
研究室や指導教員を決める時期も一律ではありません。出願時に希望教員を記載する場合、事前相談が必要な場合、入学後に決める場合などがあります。
気になる教員が見つかったら、専門分野や最近の研究業績に加え、希望する課程で研究指導を担当しているか、学生を受け入れているかを確認しましょう。連絡や訪問は、大学院が定める方法に従ってください。
修士・博士・専門職学位課程は、教育の段階や目的を示す
「課程」は、研究科や専攻とは別の観点から、教育の段階や目的を示す言葉です。同じ研究科に複数の課程が設けられていることもあります。
修士課程では、専門分野の知識を深め、研究能力や専門的な職業に必要な能力などを身につけます。修士論文などに取り組むため、授業を受けることに加えて、自分の研究課題を考えることが大切になります。
博士課程では、さらに高度な研究に取り組み、自立して研究活動を行う能力などを養います。博士課程が前期と後期に区分されている場合、博士前期課程は修士課程として扱われます。
そのため、学部卒業後の進学先を探すときは、「修士課程」だけでなく、「博士前期課程」という名称にも目を向けてください。「博士」と書いてあるから、自分には関係がないと判断しないことが大切です。
専門職学位課程は、高度な専門性が必要な職業を担う人材の養成を目的とする課程です。専門職大学院では、理論と実務を結びつける教育が行われます。
ただし、「修士課程は研究だけ、専門職大学院は実務だけ」と分けられるものではありません。修士課程で仕事上の課題を研究することもあれば、専門職大学院で理論を深く学ぶこともあります。
自分に合う課程を考えるときは、教育目的、授業の進め方、修了に必要な論文や課題、授与される学位を確認しましょう。入学後にどのような経験を積みたいかが、選ぶ手がかりになります。

学部と研究科は別の組織。異分野への進学も検討できる
大学の学部と大学院の研究科には、似た名称が使われることがあります。例えば、経済学部と経済学研究科です。関連する分野を扱っていても、教育内容や入試制度は異なるため、学部の案内だけで大学院の内容を判断しないようにしましょう。
また、大学院の組織が学部と同じ構成になっているとは限りません。複数の学部に関係する分野をまとめた研究科や、対応する学部を持たない研究科もあります。
学部で学んだ分野と異なる研究科への進学についても、大学院の出願条件によって検討できます。文学部から経営学へ、経済学部から教育学へと関心を広げることも、一つの選択肢です。
ただし、出願資格を満たすことと、入試や入学後の研究に必要な準備ができていることは別です。情報科学なら数学やプログラミング、経済学なら経済理論や統計学など、基礎知識が求められる場合があります。
異分野への進学を考える場合は、入試科目や過去問、授業内容を調べ、今の自分に何が足りないかを整理してみましょう。
志樹舎では、これまでの専攻が異なることだけを理由に、新しい学問への挑戦を諦める必要はないと考えています。仕事や別分野での経験が、研究の視点につながることもあります。その経験を生かすためにも、必要な基礎を学ぶ準備が大切です。
募集要項では、研究科・専攻・課程・入試区分を確認しよう
組織の言葉がわかってきたら、募集要項で自分の出願先を確認しましょう。基本になるのは、研究科、専攻、課程、入試区分です。
例えば、「ある研究科の、ある専攻の、修士課程を、社会人特別選抜で受験する」というように整理します。同じ研究科でも、課程や入試区分が変われば、出願資格、試験内容、提出書類が異なることがあります。
特に注意したいのは、公式サイトに掲載されたコース名が、そのまま出願単位になっているとは限らない点です。専攻単位で募集する場合もあれば、コースや研究領域ごとに希望を記入する場合もあります。
まずは募集対象と出願資格を確認し、そのうえで試験科目、提出書類、日程を読んでいくと、自分に関係する情報を整理しやすくなります。
研究指導を希望する教員の記載方法や、事前相談の要否も確認してください。研究内容が近い教員を見つけても、別の課程の担当であれば、希望する形で指導を受けられない可能性があります。
気になる大学院ごとに、出願先の正式名称と募集要項の対象年度をメモしておくと、別の専攻や過年度の情報との混同を防ぎやすくなります。

研究科の名称から一歩進んで、研究内容と学習環境を調べよう
研究科名は候補を探すための手がかりですが、それだけで志望先を決めるのは早いかもしれません。同じ名称の研究科でも、所属する教員や扱う分野、教育方針は異なります。
反対に、名称が異なる研究科で、似た問題を研究できることもあります。企業の人材育成なら、経営学、教育学、心理学など、複数の分野が候補になるでしょう。
公式サイトでは、研究科の概要から専攻やコースの紹介へ進み、教員の研究内容、授業科目、修了要件を確認してみてください。自分の関心を扱えるかに加え、そのために必要な研究方法を学べるかも大切です。
社会人の場合は、授業時間だけでなく、研究指導や調査に必要な時間も確認しましょう。教育内容が魅力的でも、現在の仕事や生活と両立できるかは別に考える必要があります。
調べてもわからないことは、質問として残しておくと役立ちます。「研究室への所属はいつ決まるのか」「希望するテーマを相談できるか」「修了時にどのような成果を求められるか」などです。
その疑問を説明会や指定の問い合わせ窓口で確かめることで、組織の名前だけでは見えなかった大学院生活が、少しずつ具体的になります。
まとめ|組織の違いを、自分に合う学びを探す手がかりにしよう
大学院は高度な教育や研究を行う場であり、その中に研究科や専攻などの組織が設けられています。コースは研究分野や学び方などの区分として使われ、研究室やゼミは具体的な研究や指導の場になります。
一方、修士課程、博士課程、専門職学位課程は、教育の段階や目的を示します。研究科や専攻と課程をあわせて確認することで、自分がどのような教育を受けるのかを把握しやすくなります。
ただし、名称や構成は大学院によって異なります。言葉を覚えることに力を入れすぎず、気になる大学院の公式サイトや募集要項を読みながら、実際の仕組みを確認していきましょう。
そして、志望先を選ぶ際には、「どの組織に所属したいか」から、もう一歩考えてみてください。そこで何を学び、どのような疑問を深めたいのか。そのために必要な教員や授業、研究環境があるか。
志樹舎では、こうした問いを自分の言葉で考えることが、納得できる進学につながると考えています。大学院の組織について知ることを、自分に合った学びの場を見つける手がかりにしていきましょう。
次回は「大学院は大学名で選ぶべき?研究内容とのバランス」をテーマに、大学の知名度と研究環境をどのように捉え、比較すればよいかを紹介します。
※大学院の組織構成、研究科・専攻・コースの名称、課程、研究指導の方法、出願資格、入試制度、修了要件などは大学院によって異なります。最新の情報は、各大学院の公式サイトや受験予定年度の募集要項で必ずご確認ください。
志樹舎では、大学院入試の各種対策に特化した専門性の高いサポートを行っています。
院試受験でお困りの方は、無料相談にお気軽にお申し込みください。
※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。



