京大大学院文系の研究計画書の書き方|字数・様式の違いと書き進め方

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京都大学大学院の文系研究科を受験するとき、多くの受験生が時間をかけることになるのが研究計画書です。研究計画書は単なる出願書類ではありません。研究科によっては書類選考の重要な材料となり、口述試験でも研究テーマや研究方法、先行研究について質問される可能性があります。

難しいのは、京都大学大学院で統一された研究計画書の形式があるわけではないことです。研究科や専攻、選抜区分によって、字数やページ数、指定様式、提出する書類の名称まで異なります。そのため、まず志望研究科の募集要項を確認し、その条件に合わせて内容を組み立てる必要があります。

この記事では、京都大学大学院の文系研究科を目指す方に向けて、研究計画書の分量や様式の違いを整理したうえで、研究テーマ、問い、先行研究、研究方法などをどのような順番で考えればよいのかを具体的に解説します。


最初に募集要項と指定様式を確認する

京都大学大学院の研究計画書の募集要項を確認する受験生

研究計画書を書き始める前に、必ず志望研究科の最新の募集要項を確認しましょう。「研究計画書はだいたい2,000字くらいだろう」と考えて書き始めてしまうと、あとから大幅な修正が必要になることがあります。

たとえば法学研究科法政理論専攻では、研究計画書について字数の目安が指定されることがあります。一方、教育学研究科では過去の募集要項において、A4判、40字×30行、5ページ以内といった形式が示された例があります。

経済学研究科では、受験するプログラムによって提出書類が異なる点にも注意が必要です。研究者養成を目的とするプログラムでは研究計画書が重要になりますが、高度専門人材の養成を目的とするプログラムでは、学修設計に関する別の書類が指定される場合があります。

つまり、「京都大学大学院の研究計画書の書き方」を一つ覚えればすべての研究科に使えるわけではありません。まず最新年度の募集要項を読み、字数、ページ数、指定様式、提出方法、提出期限を確認するところから始めましょう。


研究計画書で伝えたい5つの要素

研究科によって様式は異なりますが、研究計画書を組み立てる際には、「研究テーマ」「研究上の問いと目的」「先行研究」「研究方法・資料」「研究の意義」の5つを意識すると整理しやすくなります。

最初に考えたいのが研究テーマです。ただし、「日本の教育について研究したい」「地域社会について研究したい」といった大きなテーマだけでは、大学院で実際に何を研究するのかが伝わりません。

たとえば教育をテーマにする場合でも、どの年代を対象とするのか、小学校・中学校・高校・大学のどこを見るのか、教員を見るのか、児童・生徒を見るのか、制度を見るのかによって研究内容は大きく変わります。

研究計画書では、自分の関心を大学院の限られた在学期間で研究できる大きさまで絞り込むことが重要です。


「テーマ」と「問い」は分けて考える

研究計画書を初めて書く人がつまずきやすいのが、研究テーマはあるものの、研究上の問いが決まっていない状態です。

たとえば「戦後日本の教育」は研究テーマにはなりますが、それだけでは何を明らかにする研究なのかが分かりません。

そこから、「1950年代のある地域の中学校では、進路指導がどのように行われていたのか」「その進路指導には地域の産業構造がどのような影響を与えていたのか」と問いを具体化すると、研究としての方向が見えてきます。

テーマを絞るときには、「いつ」「どこで」「誰を・何を対象に」「何を明らかにしたいのか」の4点を書き出してみると整理しやすくなります。

特に修士論文では、壮大な社会問題をすべて解決しようとするよりも、2年間で資料を集め、分析し、論文としてまとめられる範囲に設定することが重要です。


先行研究は単なる論文紹介にしない

京都大学大学院の研究計画書に向けて先行研究を整理する受験生

研究計画書で重要になるのが先行研究の整理です。先行研究とは、自分が研究したいテーマについて、これまで研究者が何を明らかにしてきたのかを示すものです。

ただし、「A氏は○○について論じている。B氏は△△について論じている」と論文を順番に紹介するだけでは、研究計画書として十分とはいえません。

重要なのは、これまでの研究によって何が分かっていて、その一方で何が十分に明らかになっていないのかを整理することです。そして、その「まだ分かっていない部分」と自分の研究上の問いをつなげます。

たとえば、「これまで都市部の学校については多くの研究が行われてきたが、地方部については十分な検討がない」という整理ができれば、「そこで本研究では地方の中学校を対象とする」という研究目的につなげることができます。

先行研究を読むときには、内容を要約するだけでなく、「この論文で分かったこと」「残されている課題」「自分の研究との関係」の3点をメモすると、研究計画書に活用しやすくなります。


指導を希望する教員の研究も確認する

先行研究を調べる過程では、京都大学で指導を希望する教員の論文や著書にも目を通しておきましょう。

ただし、研究計画書の中で無理に教員の名前を出せば評価されるという意味ではありません。重要なのは、その研究科や教員の専門性と、自分の研究テーマに学術的な接点があることです。

たとえば、自分が使いたい研究方法について専門的な研究を行っている教員がいる、研究対象となる地域について長く研究している教員がいる、といった接点が考えられます。

教員の研究内容を調べていくと、自分のテーマがその研究科で本当に研究できるのかも判断しやすくなります。研究計画書を書き始めてから指導可能な教員がいないことに気づく事態を避けるためにも、教員探しと研究計画書作成は並行して進めましょう。


研究方法は「調べます」だけで終わらせない

研究計画書では、何を明らかにしたいのかだけでなく、「どのように明らかにするのか」も問われます。

たとえば、「教育格差について文献を調べる」「企業経営についてインタビューを行う」と書くだけでは、具体的な研究方法が十分に伝わりません。

文献研究なら、どのような資料を利用するのかを考えます。歴史研究であれば公文書、新聞、学校史、日記などが考えられます。社会調査であれば、誰を対象として、どのような方法でデータを集めるのかを検討します。インタビューを行うのであれば、対象者の想定や分析方法まで考えられると研究の実現可能性が伝わりやすくなります。

また、「その資料を本当に入手できるのか」という視点も必要です。存在しないデータや、現実的にアクセスできない資料を前提にすると、計画の実現可能性が低く見えてしまいます。

研究計画書を書く段階から、資料の所在、調査対象へのアクセス、必要な外国語能力などを確認しておきましょう。


研究の意義は大きく書きすぎない

研究の意義を書く際に、「日本社会の問題を解決する」「教育制度を根本的に変える」といった大きな表現を使いたくなるかもしれません。しかし、研究計画書では壮大さよりも、自分の研究によって学術的に何が新しく分かるのかを具体的に示すことが重要です。

たとえば、これまで十分に扱われていなかった地域や年代を分析する、既存研究とは異なる資料を使う、別の理論的視点から捉え直すといった点も研究の意義になります。

社会的な意義を書く場合でも、「この研究だけですべてを解決できる」と主張するのではなく、研究成果がどのような議論に貢献できるのかを現実的に示したほうが説得力を持ちます。


2,000字なら何をどのくらい書けばよい?

研究計画書が2,000字程度の場合、すべてを詳しく説明することはできません。そのため、内容に優先順位をつける必要があります。

一例として、研究背景と問題意識に300~400字、研究上の問いと目的に300~400字、先行研究と課題に500~600字、研究方法に400~500字、研究の意義や見通しに200~300字程度を使う方法があります。

ただし、これはあくまで考え方の一例です。研究科から指定された項目がある場合は、必ずその指示を優先してください。

字数が限られている場合には、長い自己紹介や「私は以前から○○に興味がありました」といった経緯を必要以上に書くより、研究上の問い、先行研究、研究方法を具体的に説明することを優先しましょう。


5ページ書ける場合も無理に長くしない

教育学研究科の過去の募集要項のように、研究計画書を複数ページ書ける場合には、2,000字程度の研究計画書より詳しい説明が可能です。

ページ数に余裕がある場合は、先行研究の整理や研究方法をより具体的に書くことができます。研究対象を選んだ理由、利用予定の資料、調査方法、分析の視点などを丁寧に説明するとよいでしょう。

ただし、「5ページ以内」だからといって必ず5ページいっぱいまで書かなければならないとは限りません。同じ主張を言い換えて文字数を増やすよりも、研究上必要な情報を過不足なく伝えることが重要です。

また、年度によって様式が変更される可能性があります。過去年度の研究計画書を参考にする場合も、実際の出願時には最新年度の指定を必ず確認してください。


研究計画書以外の提出書類とも内容をそろえる

京都大学大学院の研究計画書と出願書類を確認する受験生

京都大学大学院の文系入試では、研究計画書だけを提出するとは限りません。研究科によっては論文、論文要旨、自薦書、志望理由に関する書類などを提出する場合があります。

文学研究科の冬期試験では、出願者の条件などに応じて論文や論文要旨の提出が必要となる場合があります。アジア・アフリカ地域研究研究科でも、研究課題や地域への関心、志望動機などを示す書類が求められます。

ここで注意したいのが、書類ごとに内容が食い違わないようにすることです。研究計画書ではAというテーマを研究すると書いているのに、志望理由書ではまったく異なる関心を強調していると、受験生が大学院で何をしたいのかが伝わりにくくなります。

それぞれの書類には役割がありますが、「自分は何を研究したいのか」「なぜこの研究科なのか」「どのように研究するのか」という中心部分には一貫性を持たせましょう。


研究計画書は口述試験の質問集にもなる

研究計画書は提出した時点で終わりではありません。口述試験では、自分が書いた研究計画について説明を求められる可能性があります。

「なぜこのテーマを選んだのですか」「先行研究との違いは何ですか」「なぜこの資料を使うのですか」「予定している調査ができなかった場合はどうしますか」といった質問を想定しておきましょう。

研究計画書に専門用語を書いたのであれば、その意味を自分の言葉で説明できる必要があります。引用した研究者や理論について質問されても答えられるように、提出前にもう一度確認しておくことが大切です。

背伸びをして難しい言葉を並べるより、自分が理解している内容を具体的かつ論理的に書くほうが、口述試験まで含めた対策になります。


初稿は出願2か月前を目安に作る

研究計画書は、出願直前の数日間で完成させるものではありません。できれば出願の2か月程度前までに初稿を作ることを目標にしましょう。

初稿の段階では完成度が低くても構いません。まず研究テーマ、問い、先行研究、方法、意義まで一度最後まで書いてみます。

その後、1回目の修正では「研究上の問いが明確か」、2回目では「先行研究から自分の研究目的へ論理的につながっているか」、3回目では「研究方法で実際に問いへ答えられるか」というように、確認するポイントを分けると修正しやすくなります。

最後に誤字脱字、用語の統一、参考文献の表記、指定された字数やページ数を確認します。第三者に読んでもらい、「この研究で結局何を明らかにしたいのか」を説明してもらう方法も有効です。読み手が自分の意図と違う理解をしていたら、説明が不足している可能性があります。


よくある失敗は「テーマが広すぎる」こと

研究計画書で起こりやすい問題の一つが、研究テーマを広く設定しすぎることです。「日本の少子化について」「AIと教育について」「グローバル化と企業経営について」といったテーマは重要ですが、そのままでは修士課程の研究として何をするのかが見えません。

対象となる年代、地域、人、組織、制度などを限定し、「何と何の関係を調べるのか」「どの変化を明らかにするのか」といった問いへ変えていきましょう。

もう一つの失敗は、自分の主張が先に決まっているケースです。研究は、自分の考えが正しいことを証明するためだけに行うものではありません。資料やデータを調べた結果、自分の当初の予想とは異なる結論になる可能性もあります。

「○○であることを証明する」だけではなく、「○○がどのようになっているのかを明らかにする」という形で問いを立てると、研究計画として組み立てやすくなります。


今日から研究計画書を書き始める方法

まだ研究計画書を一文字も書いていない場合は、いきなり完成版を書こうとする必要はありません。まず志望する研究科の最新または直近年度の募集要項を確認し、研究計画書の字数、ページ数、指定様式、提出期限をメモしてください。

次に、「研究テーマ」「研究上の問い」「先行研究」「研究方法」「研究の意義」という5つの見出しだけを書き、その下に思いつくことを短い文章で入れていきます。

その後、自分のテーマに関係する論文を探し、まず5本程度を読むことから始めます。それぞれについて「何が分かった研究なのか」「何がまだ分かっていないのか」「自分の研究とどう関係するのか」を整理してみましょう。

同時に京都大学の教員一覧を確認し、自分のテーマに近い研究を行っている教員を探します。研究計画書と指導教員探しを並行して進めることで、「研究したいこと」と「京都大学で研究できること」の接点が見えてきます。

研究計画書は、一度で完成させるものではありません。問いを立て、文献を読み、方法を考え、書き直す過程そのものが大学院受験の準備です。早い段階から少しずつ形にしておけば、出願直前に慌てず、自分の研究内容を口述試験でも説明できる状態へ近づけます。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

※研究計画書の字数、ページ数、指定様式、提出書類、入試日程などは年度や研究科・専攻によって変更される場合があります。過去年度の募集要項だけで判断せず、出願の際は必ず京都大学大学院および志望研究科の公式サイトで、対象年度の最新の募集要項を確認してください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。