京都大学大学院教育学研究科の修士課程入試|研究者養成と社会人向けプログラムの違い

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京都大学大学院教育学研究科への進学を考えるとき、最初に確認しておきたいのが、どのプログラムで受験するのかという点です。教育学研究科には研究者養成を目的とした修士課程に加え、社会人の学び直しに対応したアカデミック・リカレント教育プログラムが設けられています。

どちらも教育や人間の発達、心理などに関する研究に取り組む大学院ですが、対象となる受験生や出願資格、選抜方法には違いがあります。また、研究計画書の分量が比較的多く、筆記試験だけでなく口頭試験も行われるなど、早い段階から準備しておきたい研究科です。

この記事では、京都大学大学院教育学研究科の修士課程を目指す方に向けて、研究者養成プログラムとアカデミック・リカレント教育プログラムの違い、研究計画書、外国語・専門科目、口頭試験、出願手続き、説明会の活用方法まで具体的に解説します。


まず研究者養成とリカレント教育の違いを確認する

京都大学大学院教育学研究科への進学を検討する受験生

京都大学大学院教育学研究科を受験するときは、まず自分がどのプログラムの対象になるのかを確認しましょう。

研究者養成を目的とするプログラムは、大学で学んできた専門分野をさらに深め、修士課程で本格的な研究に取り組みたい人が主な対象となります。修士課程修了後に博士後期課程へ進み、研究者を目指す場合だけでなく、高度な専門性を生かして教育などの分野で活躍したい人も考えられます。

一方、アカデミック・リカレント教育プログラムは、一定の社会経験を持つ人が、実務などで得た問題意識を大学院で学術的な研究へ発展させることを想定したプログラムです。

単に年齢や社会人経験の有無だけで選ぶのではなく、自分が大学院で何を研究したいのか、これまでの経歴をどのように研究へつなげたいのかを考えたうえで選択することが重要です。


研究者養成プログラムの入試はどう行われる?

教育学研究科が公開している過去の募集要項を見ると、研究者養成プログラムの入試の基本的な流れを把握できます。

2023年度入試の修士課程募集要項では、募集人員は37名とされ、外国人留学生については別途若干名の募集がありました。出願は8月に設定され、必要書類を期限までに郵送する方式が採られていました。

選抜は筆記試験と口頭試験の2段階で実施されました。第1次試験では外国語と専門科目、第2次試験では口頭試験が行われています。

2023年度入試では、筆記試験が2022年8月30日に実施され、外国語は9時から10時15分までの75分、専門科目は10時50分から12時50分までの120分でした。その後、第2次試験として9月13日から15日に口頭試験が行われました。

年度によって日程や選抜方法が変更される可能性はありますが、「研究計画書を準備し、外国語・専門科目の筆記試験を受け、さらに研究内容について口頭で説明する」という複数の対策が必要になることを想定しておきましょう。


外国語は早めに過去の試験形式を確認する

2023年度入試の研究者養成プログラムでは、外国語として英語、ドイツ語、フランス語、中国語から1科目を選択する形式が採られていました。ただし、一部のコースでは英語が指定されていました。

外国語試験の準備では、「英語を勉強する」と漠然と考えるのではなく、自分の志望するコースでどの言語を選べるのか、どのような問題が出題されるのかを確認することが重要です。

学術的な文章の読解が求められる場合は、一般的な英単語だけでなく、教育学や心理学など自分の研究分野で頻繁に使われる専門用語にも慣れておく必要があります。

専門分野の英語論文を読み、重要な部分を実際に日本語へ訳す練習をすると、外国語と専門分野の勉強を同時に進められます。過去問を確認できる場合は、問題量と試験時間も把握し、本番が近づいたら時間を計って解く練習へ移りましょう。


専門科目は志望コースに合わせて準備する

京都大学大学院教育学研究科の専門科目を勉強する受験生

教育学研究科では、外国語だけでなく専門科目の準備も重要です。専門科目では、志望する研究分野について大学院で研究するための基礎的な知識や、論述する力が求められます。

まず、自分の志望コースの過去の試験内容を確認し、どの分野からどのような形式で出題されているのかを整理しましょう。そのうえで、教育学、心理学など自分の専門分野の基本書を読み直します。

大学院入試では、用語を暗記しているだけでは十分ではありません。「この概念を説明しなさい」「この問題について論じなさい」と問われたときに、自分の言葉で筋道を立てて説明する必要があります。

基本書を一章読んだら、内容を400字程度でまとめる、重要なテーマについて800字程度で論述するなど、書く練習も取り入れましょう。知識をインプットする学習と、答案としてアウトプットする練習を並行して行うことが大切です。


研究計画書は5ページ以内の指定例がある

教育学研究科を目指す方が早めに準備したいのが研究計画書です。

2023年度入試の修士課程募集要項では、研究計画書についてA4判、40字×30行の設定で5ページ以内という指定がありました。英語で作成する場合には2,000語以内とされていました。

40字×30行を5ページ使うと最大で6,000字程度になるため、2,000字程度の研究計画書を求める大学院と比べると、かなり詳しく研究構想を説明できる分量です。

ただし、分量が多いからといって、自分の教育経験や関心を長く書けばよいわけではありません。研究テーマ、問題意識、研究上の問い、先行研究、研究方法、利用する資料やデータ、研究の意義などを論理的につなげる必要があります。

特に「なぜこの問題を研究する必要があるのか」と「その問いにどのような方法で答えるのか」のつながりを意識しましょう。


研究計画書では研究方法を具体的にする

教育学分野では、学校や教員、児童・生徒、保護者などを対象とした研究を考える人も多いでしょう。その場合、研究計画書では単に「アンケートを行う」「インタビューをする」と書くだけではなく、どのような対象に、何を調査し、その結果をどのように分析するのかまで考えることが重要です。

心理学的な実験を行うのであれば、何を測定し、どのようなデータから研究上の問いを検討するのかを考えます。歴史的な教育制度を研究するのであれば、利用する公文書、学校史、新聞、教育関係資料などの所在も確認しておきたいところです。

また、人を対象とする調査では研究倫理への配慮も必要になります。受験段階ですべての手続きを確定させる必要はありませんが、調査対象者への配慮や個人情報の扱いなどについて意識していることは重要です。

研究計画書は「やりたい研究」を説明するだけでなく、「大学院の期間内に実行できる研究なのか」を示す書類でもあります。


アカデミック・リカレント教育プログラムとは?

社会人として京都大学大学院教育学研究科への進学を考える受験生

教育学研究科には、社会人を対象としたアカデミック・リカレント教育プログラムもあります。

2025年度入試の募集要項では、大学を卒業していることなどの学歴要件に加え、2年以上の在職経験や社会的活動の経験などが出願資格として示されていました。職種や活動分野について一律の制限を設けるものではありませんでしたが、コースによって追加の条件が設けられる場合があります。

2025年度入試では募集人員が5名で、8月に出願、9月に第1次の筆記試験と第2次の口頭試験が行われました。研究計画書についても、40字×30行、5ページ以内という指定がありました。

過去の募集要項では、外国語として英語が課され、辞書の持ち込みに関する規定も設けられていました。試験科目や持ち込み可能なものについては変更される可能性があるため、最新年度の募集要項を確認してください。


社会人経験はそのまま研究テーマになるわけではない

アカデミック・リカレント教育プログラムを目指す場合、これまでの仕事や社会活動で感じた問題意識は研究テーマを考える重要な出発点になります。

たとえば学校で働いている人であれば、生徒の学習行動の変化、教員間の連携、ICTの利用、進路指導など、日々の仕事からさまざまな疑問が生まれるでしょう。行政、福祉、企業などで働いている人も、それぞれの立場から教育や学習、人材育成に関する課題を感じているかもしれません。

しかし、「仕事をしていて○○が問題だと思った」という経験だけでは、大学院の研究計画にはなりません。

その問題について、これまでどのような研究が行われてきたのかを調べ、先行研究で明らかになっていることと、まだ十分に分かっていないことを整理する必要があります。そして、自分は何をどのような方法で明らかにするのかを研究上の問いとして設定します。

社会人経験は研究の結論ではなく、「なぜこの問いを持ったのか」を説明する出発点として活用すると、研究計画に説得力を持たせやすくなります。


実務経験と研究の距離にも注意する

社会人が自分の職場を研究対象にする場合には、研究しやすいという利点がある一方で、注意すべき点もあります。

たとえば、自分が勤務する学校の生徒や同僚を調査対象とする場合、立場の違いが回答に影響する可能性があります。業務上知り得た情報を、そのまま研究データとして利用できるとも限りません。

自分の経験に近いテーマほど、「自分はこう思う」という実感と、研究によって明らかにできることを分けて考える必要があります。

研究計画を作る際には、経験を生かしながらも、一度研究者の立場から問い直すことを意識しましょう。


口頭試験では研究計画を自分の言葉で説明する

教育学研究科の入試では、過去の選抜で筆記試験に加えて口頭試験が行われています。そのため、研究計画書は提出して終わりではありません。

「何を研究したいのか」「なぜそのテーマを選んだのか」「先行研究と何が違うのか」「どのような方法で研究するのか」といった質問に答えられるよう準備しましょう。

特に社会人の場合には、「なぜ今、大学院へ進学するのか」「これまでの仕事と研究テーマはどのようにつながるのか」「修士課程修了後に研究成果をどのように生かしたいのか」といった質問も想定しておくとよいでしょう。

研究テーマについて30秒、1分、3分の3種類で説明する練習をしておくと、質問に応じて説明の長さを調整しやすくなります。


募集要項の入手方法にも注意する

教育学研究科では、年度や入試区分によって募集要項の冊子の入手方法が案内されます。過去には、冊子の現物を入手し、そこに含まれる出願書類を使って手続きを進める方式が採られていました。

郵送で請求する場合には、取り寄せにも日数が必要です。出願直前になってから募集要項を請求すると、書類準備の時間が不足する可能性があります。

また、出願書類を郵送する方式の場合、「消印有効」ではなく「必着」とされることがあります。締切日だけを見るのではなく、大学へいつまでに到着しなければならないのかを確認してください。

検定料の支払い方法、必要な証明書、郵送方法なども募集要項に従います。過去年度の方法が翌年度も同じとは限らないため、受験年度の案内が公開されたら改めて確認しましょう。


説明会とコース別相談会は志望先確認に活用する

教育学研究科では、入試ガイダンスやコース別の相談機会が設けられることがあります。

2027年度入試に向けては、2026年6月6日にオンラインで説明会が実施され、入試ガイダンスとコース別相談会が設定されました。コースによって相談会の実施方法が異なる場合もあります。

説明会は、募集要項を読み上げてもらう場としてだけ利用するのではなく、自分の志望コースや研究テーマが適切かを確認する機会として活用しましょう。

参加前には、自分が研究したいテーマを100~200字程度で簡単にまとめ、所属教員の研究内容にも目を通しておくと質問を考えやすくなります。

ただし、「この研究テーマなら合格できますか」と聞くのではなく、「○○という問題について△△の方法で研究することを考えていますが、このコースではどのような専門分野との関係が考えられますか」など、研究内容を具体的にしたうえで相談すると有意義な情報を得やすくなります。


2028年度入試を目指すなら春までにテーマを固める

2028年度入試を目指す場合、募集要項が公開されるまで何もしないのではなく、過去年度の入試情報を参考に準備を始めておきましょう。

まず年内から春にかけて、志望するコースと指導を希望する教員を調べます。同時に研究テーマに関係する論文を読み、先行研究を整理します。

春には研究上の問いと研究方法をある程度固め、研究計画書の構成を作ります。初夏までに初稿を書ける状態を目指すと、その後に何度か修正する時間を確保できます。

外国語と専門科目は研究計画書の完成を待たず、並行して進めます。特に外国語は短期間で伸ばすことが難しいため、志望分野の英語論文を継続的に読む習慣を早めにつけておきましょう。

説明会が開催される場合は参加し、募集要項が公表されたら、それまでの準備内容と最新の試験科目・出願方法に違いがないかを確認します。


教育学研究科を目指す人が今からやること

まず、研究者養成プログラムとアカデミック・リカレント教育プログラムのどちらを受験するのかを検討しましょう。社会人だから必ずリカレント教育プログラムというわけではなく、自分の研究目的と出願資格を確認して判断することが大切です。

次に、志望するコースと教員を調べ、自分の研究テーマに近い論文を2~3本読んでみます。そのうえで、「何を明らかにしたいのか」「なぜそれを研究する必要があるのか」「どのような方法で調べるのか」を短い文章にまとめてみましょう。

研究計画書、外国語、専門科目、口頭試験をすべて出願直前に準備するのは大変です。研究計画書と専門科目の勉強を並行しながら、外国語には継続的に取り組み、口頭試験についても早い段階から研究内容を声に出して説明する練習を始めておくと安心です。

教育学研究科の入試では、自分の経験や関心を語るだけではなく、それを学術的な問いへ変え、研究としてどのように検証するのかを示すことが重要です。まずは過去の募集要項と教員情報を確認し、自分の問題意識を研究計画へ変えるところから準備を始めていきましょう。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

※この記事で紹介した募集人員、出願資格、試験日程、研究計画書の様式、試験科目、募集要項の入手方法などには過去年度の情報が含まれています。入試制度は年度によって変更される場合がありますので、出願の際は必ず京都大学大学院教育学研究科の公式サイトと、対象年度の最新の募集要項を確認してください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。