「活動実績書」や「経歴書」の自由記述欄。
ここを、単なる「やったことリスト(ToDoリスト)」にしていませんか?

ボランティア活動に参加しました。

資格を取得しました。

留学に行きました。

残念ながら、これらは「事実」であって「実績」ではありません。
大学院入試において評価されるのは、その経験を通じてあなたが「どのような法則(知見)を抽出したか」という「抽象化能力」です。

今回は、教育学や組織論で使われる「コルブの経験学習モデル」を応用して、教授を唸らせる実績書の書き方を解説します。

1. 経験学習のサイクルを回す

人は経験をただ積むだけでは成長しません。以下の4つのステップを踏んで初めて、経験が知識に変わります。

具体的経験(Concrete Experience): 何かをする。

省察的観察(Reflective Observation): 振り返る(なぜうまくいったのか?)。

抽象的概念化(Abstract Conceptualization): 法則を見つける(つまり、こういうことか)。

能動的実験(Active Experimentation): 次に活かす。

多くの受験生は「1. 具体的経験」しか書きません。しかし、教授が見たいのは「3. 抽象的概念化」のレベルです。

2. 具体例:留学経験の書き換え

【悪い例(事実のみ)】
「大学2年次にアメリカへ1年間留学しました。現地の学生と交流し、TOEICスコアが800点になりました。」

これでは「英語が話せるようになった」だけです。

【良い例(概念化あり)】
「米国留学中、多国籍チームでのプロジェクトに参加し、意見の対立を経験した(経験)。そこで、文化による『沈黙』の意味の違いに気づき(省察)、合意形成には言語的説明だけでなく、非言語的な文脈の共有が不可欠であるという『ハイコンテクスト・コミュニケーションの重要性』を学んだ(概念化)。この知見は、本大学院での異文化経営の研究における基礎的な視座となると考える(応用)。」

ここまで書いて初めて、「留学経験」が「研究のポテンシャル」に変わります。

3. 再現性をアピールする

なぜ「概念化」が重要なのか。それは「再現性」があるからです。
「たまたまうまくいった」のではなく、「成功の法則を理解しているから、大学院に入って別の課題に直面しても、同じように解決できます」という証明になるのです。

活動実績書には、やったことの羅列ではなく、一つのエピソードを深く掘り下げて書いてください。
「私はこの経験から、世の中の『〇〇というメカニズム』を発見しました」
そう語れるエピソードこそが、あなたの最強の実績です。

まとめ:研究者は「抽象化」のプロ

研究とは、個別の事象から普遍的な理論(抽象)を導き出す作業です。
入試の段階で、自分の人生経験を素材にして、この「抽象化」ができている学生は、教授から見て即戦力候補です。

あなたの履歴書を見直してください。「やったこと」だけで終わっていませんか?
その後ろに、「つまり、ここから何を得たのか(概念)」を一行付け足すだけで、書類の深みは劇的に増します。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。