文系大学院では何を研究する?学問分野と研究テーマの具体例

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大学院への進学を考えたとき、「文系の大学院では何を研究するのだろう」「文学や経済学を大学院で学ぶと、どのような研究ができるのだろう」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

理系大学院では実験や研究室での活動をイメージしやすい一方、文系大学院での研究は、具体的な姿が見えにくいかもしれません。しかし、文系大学院でも、人間の行動や社会の仕組み、文化、歴史、経済活動などを対象に、多様な研究が行われています。

例えば、文学では作品や歴史的資料を読み解き、心理学では人間の感情や行動を調べます。教育学では学習や教育制度、経済学では雇用や物価、経営学では企業や組織の活動を研究することができます。

ここで知っておきたいのは、文系の研究が単に自分の意見や感想を述べる活動ではないということです。研究では、先行研究を確認し、資料やデータを根拠として、自分の問いを検討していきます。

この記事では、文系大学院で学べる代表的な分野と研究テーマの具体例を紹介し、自分の関心を研究につなげるための考え方を解説します。


文系大学院では、どのようなことを研究する?

文系大学院では、人間の考え方や行動、社会の仕組み、文化、歴史、経済活動など、幅広いテーマを研究対象としています。

例えば、「なぜ人は同じ出来事に対して異なる判断をするのか」「地域によって教育環境に違いが生まれるのはなぜか」「企業ではどのような仕組みが従業員の働きやすさにつながるのか」といった疑問も、研究の出発点になります。

研究方法は分野によって異なります。文献や歴史的資料を読み解く場合もあれば、アンケートやインタビューを行う場合、統計データを分析する場合もあります。

また、同じテーマであっても、学問分野によって研究の視点が異なることがあります。

例えば、少子化という問題を考える場合、経済学では所得や雇用との関係を分析し、社会学では家族観や社会制度との関係を研究することが考えられます。

つまり、研究したい社会問題が決まっていても、進学すべき研究科が一つに決まるとは限りません。何を明らかにしたいのか、どのような方法で調べたいのかによって、適した学問分野が変わるのです。

文系大学院で専門分野の文献を読みながら研究するイメージ

文学研究科では何を研究する?

文学研究科では、文学作品や言語、歴史、思想、文化などを研究することがあります。

例えば、日本文学の分野では、特定の作家や作品を取り上げ、その表現方法や作品が生まれた時代の社会背景について考察します。

「同じ作家の作品でも、時代によって家族の描かれ方が変化するのはなぜか」という問いを立て、複数の作品を比較する研究も考えられます。

歴史学では、古文書や公的記録、新聞などの史料を調べ、過去の出来事や社会の仕組みを明らかにしようとします。

言語学では、言葉の使われ方や変化、地域による表現の違いなどを研究することがあります。例えば、SNSの普及によって若者の言葉遣いがどのように変化しているのかという疑問も、研究のきっかけになります。

文学研究科といっても、好きな小説を読んで感想を書くわけではありません。作品の解釈を示す場合も、本文の表現や歴史的背景、先行研究などを根拠として説明する必要があります。

自分が作品から何を感じたかという関心を出発点にしながら、その解釈がどのような資料によって支えられるのかを考えることが、研究につながります。

心理学の大学院では何を研究する?

心理学は、人間の心や行動について、科学的な方法を用いて理解しようとする学問です。

大学院では、認知、感情、発達、対人関係、社会行動など、さまざまなテーマを研究することがあります。

例えば、「人はなぜ他人と自分を比較してしまうのか」「褒められることは学習意欲にどのような影響を与えるのか」といった疑問を研究課題として考えることができます。

研究方法としては、実験、質問紙調査、観察、インタビューなどが用いられる場合があります。

例えば、SNSの利用と自己評価の関係を研究する場合、先行研究を調べたうえで、どのような利用行動に注目するのか、自己評価をどのように測定するのかを検討します。

ここで注意したいのは、二つの事柄に関係が見られたとしても、一方がもう一方の原因とは限らないことです。研究では、調査結果から何が言えるのか、何までは言えないのかを慎重に考える必要があります。

また、心理学の大学院には、基礎研究を中心とする課程のほか、臨床心理学などを専門的に学ぶ課程もあります。

公認心理師などの資格取得を目指す場合には、必要な履修科目や実習、受験資格に関する条件があるため、進学先の確認が重要です。

教育学の大学院では何を研究する?

教育学では、学校教育だけでなく、人が学び成長する仕組みや、教育制度、家庭や地域社会における学習なども研究対象になります。

例えば、「子どもの学習意欲はどのような授業で高まるのか」「家庭環境によって学習機会に違いが生まれるのはなぜか」といった問いを考えることができます。

学校現場で働く教員が、授業方法や学級運営について研究することもあります。

また、企業で人材育成に携わる社会人が、成人の学習や研修の効果について関心を持つ場合もあるでしょう。

例えば、「社会人が仕事を続けながら学習するためには、どのような支援が必要なのか」というテーマは、成人教育や生涯学習の研究につながる可能性があります。

教育学の研究では、現場で感じた課題が出発点になることもあります。ただし、「この指導方法は効果があるはずだ」という経験上の判断を、そのまま研究の結論にすることはできません。

どのような条件で効果が見られるのか、別の要因は考えられないかを検討する必要があります。

教育学の大学院には、研究を中心とする課程のほか、教員の実践的な指導力を高める教職大学院もあります。目的に応じて教育内容を比較しましょう。

教育学や心理学の研究テーマを考える大学院生のイメージ

社会学の大学院では何を研究する?

社会学は、人と人との関係や、社会の仕組み、集団や組織のあり方などを研究する学問です。

研究対象は幅広く、家族、地域社会、働き方、メディア、ジェンダー、社会階層など、身近な問題も扱います。

例えば、「都市部と地方では、人々の地域との関わり方にどのような違いがあるのか」「SNS上のコミュニケーションは人間関係にどのような影響を与えるのか」といった問いを考えることができます。

社会学の研究では、統計データを用いる量的研究のほか、インタビューや参与観察などを通じて人々の経験や行動を理解する質的研究も行われています。

例えば、地域活動への参加について研究する場合、住民へのアンケートで参加状況を調べる方法もあれば、実際の活動に参加し、関係者の経験を詳しく聞く方法も考えられます。

同じ問題でも、数値から全体的な傾向を把握したいのか、一人ひとりの経験を詳しく理解したいのかによって、研究方法は変わります。

なお、調査を行う際には、対象者の同意や個人情報の保護など、研究倫理への配慮が必要です。

社会学は、日常生活で当たり前だと思っていることを、別の角度から見直すきっかけにもなる学問です。

経済学の大学院では何を研究する?

経済学では、人々や企業の意思決定、市場の仕組み、政府の政策、雇用、物価、所得格差などを研究します。

例えば、「最低賃金の引き上げは雇用にどのような影響を与えるのか」「地域によって賃金水準が異なるのはなぜか」といった問いが考えられます。

経済学の研究では、経済理論を用いて問題を整理したり、統計データを分析して仮説を検証したりすることがあります。

例えば、若年層の就業状況について研究する場合、雇用に関する統計資料を調べ、地域や年代による違いを分析することが考えられます。

その際、単に数値の違いを示すだけでは十分ではありません。年齢構成や産業構造など、結果に関係する別の要因も考慮する必要があります。

経済学は文系分野に分類されることが多いものの、研究内容によっては数学や統計学の知識が重要になります。

そのため、経済学の大学院を目指す場合には、研究したいテーマだけでなく、入試で必要な数学や専門科目の範囲も確認しておくとよいでしょう。

経営学の大学院では何を研究する?

経営学では、企業や組織の活動について、経営戦略、マーケティング、組織行動、人材育成、会計、財務などの視点から研究します。

例えば、「従業員が働きがいを感じる職場にはどのような特徴があるのか」「企業の新しい商品は、どのような条件で消費者に受け入れられるのか」といった問いが考えられます。

企業で働く社会人にとっては、日々の仕事で感じている疑問が研究への関心につながることもあるでしょう。

例えば、営業活動に携わる人が、顧客との長期的な関係づくりに関心を持ち、顧客満足や信頼形成について研究したいと考える場合があります。

経営学の大学院では、企業の事例を調べたり、アンケートやインタビューを行ったり、財務データを分析したりすることがあります。

ただし、実務で成果を出した方法が、他の企業でも同じように通用するとは限りません。企業規模や業界、組織文化などの条件によって、結果が変わる可能性があります。

経験を理論と照らし合わせ、どのような条件でその考え方が成り立つのかを検討できることが、大学院で経営学を学ぶ意義の一つです。

また、経営学を学べる大学院には、研究を重視する修士課程と、実務的な教育を重視するMBAなどの専門職学位課程があります。学びたい内容に応じて比較しましょう。

法学・政治学の大学院では何を研究する?

法学では、法律の仕組みや解釈、制度のあり方などを研究します。政治学では、政治制度や政策決定、国際関係、行政などを研究対象としています。

例えば、法学では「個人情報の保護と企業活動をどのように両立させるべきか」といった問題を考えることができます。

政治学では、「地方自治体の政策は、どのような過程で決定されるのか」「若者の政治参加に関係する要因は何か」といった問いが考えられます。

研究では、法律や判例、政策文書、歴史的資料、統計データなどを扱う場合があります。

また、公共政策を専門的に学べる大学院では、行政や社会問題について、経済学や政治学など複数の分野を組み合わせて考えることもあります。

なお、法律を研究する大学院と、法曹養成を目的とする法科大学院は、教育目的や課程が異なります。

法学や政治学に関心がある場合には、研究を中心に学びたいのか、特定の職業に必要な能力を身につけたいのかを整理して進学先を探すことが重要です。

同じテーマでも研究する学問分野は異なる

文系大学院の研究テーマを考える際には、一つの問題が複数の学問分野と関係していることを知っておくと役立ちます。

例えば、「働きやすい職場」というテーマを考えてみましょう。

心理学では、仕事への満足感やストレス、意欲などに注目することが考えられます。

社会学では、働き方と家族生活の関係や、職場における人間関係、雇用形態の違いなどを研究することができます。

経済学では、賃金や労働時間、雇用制度が働き方に与える影響を分析することが考えられます。

経営学では、人事制度や組織文化、管理職の行動などに注目することができるでしょう。

同じ「働きやすい職場」という関心でも、研究の問いや方法が違えば、適した大学院も変わります。

大学院を探す際に、最初から研究科名を一つに決める必要はありません。自分が明らかにしたいことを考え、その問いに近い研究を行っている教員を探す方法もあります。

異なる学問分野の視点から研究テーマについて議論するイメージ

身近な疑問を研究テーマにするには?

文系大学院で研究できる分野を知っても、「自分には研究したいテーマがない」と感じる方もいるかもしれません。

その場合は、日常生活や仕事の中で気になっていることを振り返ってみましょう。

例えば、「なぜ同じ授業を受けても、勉強が好きになる人とそうでない人がいるのだろう」という疑問は、教育学や心理学への関心につながります。

また、「なぜ地域によってお店の数や種類が違うのだろう」という疑問は、経済学や地域研究などにつながる可能性があります。

ただし、身近な疑問がそのまま研究テーマとして成立するわけではありません。

研究では、何を明らかにしたいのかを具体的にし、これまでの研究で何がわかっているのかを調べる必要があります。

例えば、「SNSは人間関係に悪い影響を与えるのか」という疑問であれば、対象とする年代やSNSの利用方法、調べたい人間関係の側面などを明確にしていきます。

そのうえで、先行研究を確認し、実際に調査できる範囲へと問いを絞り込むことが重要です。

最初から独創的な研究テーマを考えようとする必要はありません。まずは、自分が繰り返し気になっていることを言葉にし、それがどの学問分野で扱われているのかを調べてみましょう。

研究テーマの見つけ方や絞り込み方については、この連載の第6章で詳しく解説します。

文系大学院を選ぶときに確認したいこと

文系大学院への進学を考える際には、まず自分が関心を持つ分野を整理することが大切です。

そのうえで、大学院の公式サイトを調べ、研究科や専攻の特徴、教員の研究分野、授業科目などを確認しましょう。

例えば、心理学に興味がある場合でも、認知心理学を研究したいのか、発達心理学を学びたいのかによって、適した大学院は異なることがあります。

また、研究したいテーマに近い教員が在籍していても、現在その教員が大学院生を受け入れているとは限りません。募集要項や研究指導体制も確認する必要があります。

社会人が進学する場合には、授業時間や研究指導の方法、仕事との両立が可能かどうかも重要な確認事項です。

大学院によっては、夜間や土曜日に授業を開講している場合や、長期履修制度を設けている場合もあります。

進学先を選ぶときには、大学名や知名度だけでなく、自分の関心を深められる研究環境があるかどうかを重視しましょう。

まとめ|文系大学院の研究は身近な疑問から始まる

文系大学院では、文学、心理学、教育学、社会学、経済学、経営学、法学、政治学など、さまざまな分野の研究が行われています。

研究対象は、文学作品や歴史的資料だけではありません。人間の行動、学校教育、働き方、企業活動、社会制度など、日常生活と関わりの深いテーマも数多くあります。

大学院での研究を考える際には、最初から学問分野を一つに決める必要はありません。まずは、自分が何に疑問を感じ、何を明らかにしたいのかを考えることが大切です。

今日できることとして、最近気になった出来事を一つ選び、「なぜそうなるのだろう」と感じた理由を書き出してみてください。そして、その疑問に近い研究を行っている大学院や教員を調べてみましょう。

次回は「理系大学院では何を研究する?研究室生活と研究活動の基本」をテーマに、理系大学院の研究分野や研究室での生活について紹介します。

※大学院の研究分野、指導教員、入試制度、出願資格、授業形態などは大学院・研究科によって異なります。最新の情報は、各大学院の公式サイトや募集要項で必ずご確認ください。

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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

小杉樹彦(志樹舎 創業者)

小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。 代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。 早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。 現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。 ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。