
大学院の修士課程と博士課程はどう違う?進学前に知りたい基礎知識
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大学院について調べ始めると、「修士課程」「博士課程」「博士前期課程」「博士後期課程」といった言葉を目にすることがあります。さらに、MBAなどの専門職学位課程もあり、それぞれ何が違うのか、戸惑う方もいるのではないでしょうか。
大学院には複数の課程があり、学ぶ目的や標準修業年限、取得できる学位が異なります。ただし、これらは単純に学力の高さを表す序列ではありません。どの課程が適しているかは、何を学び、どのような力を身につけたいかによって変わります。
この記事では、修士課程と博士課程の違い、専門職学位課程の特徴、進学前に確認したいポイントを解説します。
大学院には主に3つの課程がある
日本の大学院には、主に修士課程、博士課程、専門職学位課程があります。
修士課程は、専門分野について高度な知識を身につけ、研究能力などを養う課程です。標準修業年限は原則2年間で、修了すると修士の学位が授与されます。
博士課程は、さらに高度な研究に取り組み、自立して研究活動を行うための能力などを養う課程です。課程の構成によって、修業年限や入学の仕組みが異なります。
専門職学位課程は、高度な専門性が求められる職業を担うための能力を養う課程です。経営管理、法務、教職などの分野に設けられています。
ここで重要なのは、修士課程が博士課程より劣っているわけでも、専門職大学院が研究を行わない場所というわけでもないことです。それぞれ教育目的が異なるため、自分の関心に合う課程を選ぶ必要があります。

修士課程とは?専門分野を深く学び、研究の基礎を身につける
修士課程は、大学卒業後に大学院へ進学する人にとって、最初の進学先となることが多い課程です。
一般的な標準修業年限は2年間です。専門分野の授業を受けながら、自分の研究テーマについて調査や分析を進め、指導教員の助言を受けて研究成果をまとめます。
例えば、教育学の修士課程では、教育心理学や教育社会学を学びながら、「協働学習は生徒の学習意欲とどのように関係するのか」といったテーマを研究することが考えられます。
経済学の修士課程では、経済理論や統計分析の方法を学び、地域経済や雇用、所得格差などを研究する場合もあります。
修士課程で大切なのは、専門知識を増やすことだけではありません。自分の関心を研究課題として整理し、先行研究を読み、適切な方法で検討する力を身につけることです。
修了には、所定の単位の修得や必要な研究指導に加え、修士論文または特定の課題についての研究成果の審査、最終試験などが求められます。具体的な要件は大学院によって異なります。
修士の学位を取得すると何が変わる?
修士課程を修了すると、修士の学位を取得できます。学位には、修士(文学)、修士(経済学)、修士(工学)など、専攻分野に応じた名称があります。
修士の学位は、大学院で所定の学修・研究を行い、一定の成果を修めたことを示すものです。
ただし、修士号を取得すれば、必ず就職や転職に有利になるわけではありません。学位の評価は、職種や業界、企業によって異なります。
例えば、研究開発職では修士課程で身につけた専門知識が評価される場合があります。一方、職種によっては実務経験や資格が重視されることもあります。
大学院進学を考える際には、学位の名称だけでなく、修了までの過程で何を学び、どのような能力を身につけられるかにも目を向けたいところです。
博士課程とは?自分の研究をさらに発展させる課程
博士課程は、専門分野について高度な研究を進め、自立した研究者として必要な能力などを養う課程です。
博士課程の標準修業年限は原則5年間ですが、多くの大学院では前期2年間と後期3年間に区分されています。
この場合、前期2年間は修士課程として取り扱われ、博士前期課程と呼ばれます。その後の3年間が博士後期課程です。
ただし、すべての博士課程が同じ構成ではありません。医学、歯学などの分野には、標準修業年限が4年間の博士課程もあります。
博士課程では、研究テーマについて専門的な調査や分析を進め、研究成果を学術論文などとして発表することがあります。また、博士の学位取得に向けて博士論文の作成に取り組みます。
例えば、修士課程で一つの地域の雇用問題を研究した人が、博士後期課程では複数の地域を比較し、雇用政策と地域経済の関係をさらに詳しく検討することも考えられます。
博士課程で求められるのは、既存の知識を理解することに加え、その分野の研究に新たな知見を加えようとする姿勢です。

博士前期課程と博士後期課程はどう違う?
大学院の公式サイトで「博士前期課程」という名称を見て、最初から博士号の取得を目指す課程だと思う方もいるかもしれません。
しかし、区分制の博士課程における博士前期課程は、修士課程として取り扱われます。一般的には2年間で、修了すると修士の学位が授与されます。
一方、博士後期課程は、修士課程や博士前期課程を修了した人などが、さらに高度な研究に取り組む課程です。
博士後期課程の標準修業年限は一般的に3年間ですが、3年間在籍すれば必ず博士号を取得できるわけではありません。
博士の学位を取得するには、大学院が定める要件を満たし、博士論文の審査などに合格する必要があります。
また、所定の期間在籍して必要な単位を修得しても、博士論文の審査に合格していなければ、博士の学位を取得したことにはなりません。
進学先を調べる際には、課程の名称だけでなく、学位取得までの要件や研究指導体制を確認することが重要です。
修士課程を修了したら、必ず博士課程へ進むの?
修士課程を修了した後、必ず博士後期課程へ進学する必要はありません。
企業や行政機関などに就職する人もいれば、博士後期課程に進んで研究を続ける人もいます。社会人の場合は、修士課程で学んだことを現在の仕事に生かす選択も考えられます。
例えば、経営学の修士課程で組織運営を研究した人が、修了後に企業で働き続けることもあります。一方、文学や歴史学などの分野で研究者を目指す人が、博士後期課程への進学を検討する場合もあるでしょう。
修士課程に入学する段階で、博士後期課程まで進むかどうかを決めていない人もいます。研究を続ける中で、さらに深く追究したい課題が見つかることもあるからです。
ただし、博士後期課程への進学には、別途選考が必要になる場合があります。また、研究を続けるための時間や費用、修了後の進路についても考える必要があります。
博士課程への進学は、修士課程の延長として自動的に選ぶものではありません。自分が研究を続けたい理由と、そのための環境を確認して判断することが大切です。
専門職学位課程とは?実務に関わる高度な専門性を養う
大学院には、修士課程や博士課程のほかに、専門職学位課程があります。
専門職学位課程は、高度な専門性が求められる職業を担うための能力を養うことを目的としています。
代表的な例として、経営管理を学ぶビジネススクール、法曹養成を目的とする法科大学院、教員の専門性を高める教職大学院などがあります。
例えば、MBAを取得できる専門職大学院では、経営戦略、マーケティング、会計、組織運営などを学ぶことがあります。
授業では、企業の事例を用いた討論やグループワークなど、実務との関係を意識した学習方法が取り入れられる場合もあります。
専門職学位課程では、課程の種類に応じて、経営管理修士(専門職)や法務博士(専門職)などの専門職学位が授与されます。
なお、法務博士(専門職)は名称に「博士」が含まれますが、一般的な研究大学院の博士号とは異なる専門職学位です。学位の名称だけで課程の性質を判断しないようにしましょう。
研究を重視する大学院と専門職大学院はどう選ぶ?
研究を中心に学びたいのか、実務に関わる専門能力を高めたいのかは、大学院を選ぶ際の重要な判断材料です。
例えば、「企業の人材育成について、先行研究を調べながら独自の研究を進めたい」と考えている場合には、経営学や教育学などの修士課程が選択肢になるかもしれません。
一方、「経営戦略や会計、組織運営を体系的に学び、実務での判断力を高めたい」と考えている場合には、MBAなどの専門職学位課程が候補になることがあります。
ただし、研究を重視する大学院でも実務に関わるテーマを扱いますし、専門職大学院でも理論や調査方法を学びます。研究と実務が完全に分かれているわけではありません。
同じ経営学という分野でも、大学院によって授業の進め方や修了要件は異なります。修士論文の作成を重視する課程もあれば、実践的な演習やプロジェクトを中心とする課程もあります。
大切なのは、課程の名称や知名度だけで選ばないことです。自分が身につけたい力と、大学院で提供される教育内容が合っているかを確認しましょう。

大学院の課程を選ぶ前に確認したいこと
大学院への進学を考える際には、取得できる学位、標準修業年限、修了要件、入試制度を確認しましょう。
まず、取得できる学位です。同じ研究科名でも、修士課程と専門職学位課程では取得できる学位が異なる場合があります。
次に、標準修業年限です。一般的な修士課程は2年間ですが、課程によって異なる場合があります。社会人向けに長期履修制度を設けている大学院もあります。
さらに、修了要件も重要です。修士論文が必要なのか、特定の課題についての研究成果で修了できるのか、実務的な演習が中心なのかによって、大学院生活の進め方が変わります。
入試制度にも注意が必要です。修士課程と博士後期課程では出願資格が異なることが一般的です。専門職大学院では、社会人経験などが出願条件となる場合もあります。
特に働きながら進学する場合は、授業時間だけでなく、研究指導の方法や必要な登校日数も確認しておきたいところです。
大学院の公式サイトでカリキュラムや修了要件を確認し、疑問があれば説明会などで質問してみましょう。
最初から博士課程まで考える必要はある?
大学院に興味を持ったばかりの段階では、修士課程の先まで考えられない方もいるでしょう。その場合、最初から博士課程への進学を決めておく必要はありません。
例えば、大学で学んだ心理学をさらに深めたい学生であれば、まず修士課程でどのような研究ができるのかを調べることから始められます。
社会人として経営学を学びたい場合には、修士課程と専門職学位課程を比較し、自分の目的に合う進学先を探すことができます。
一方、将来研究者を目指したい場合には、博士後期課程への進学や研究環境も視野に入れて大学院を選ぶことが大切です。
大学院進学は、必ずしも長い研究生活を最初から約束するものではありません。まずは、自分が何を学びたいのか、そのためにどの課程が適しているのかを考えてみましょう。
まとめ|課程の名称よりも、そこで何を学ぶかが大切
大学院には、主に修士課程、博士課程、専門職学位課程があります。
修士課程は専門分野の知識や研究能力を深める課程、博士課程はさらに高度な研究に取り組む課程です。専門職学位課程では、実務に関わる高度な専門能力を養います。
どの課程が適しているかは、大学院で学びたい内容や将来の目標によって異なります。博士号を取得することだけが大学院での学びの到達点ではありません。
まずは興味のある大学院を一つ選び、公式サイトで課程の名称、取得できる学位、修了要件を確認してみてください。その違いを知ることが、自分に合った進学先を考える第一歩になります。
次回は「文系大学院では何を研究する?学問分野と研究テーマの具体例」をテーマに、文学、心理学、教育学、経済学、経営学などの研究分野を具体的に紹介します。
※大学院の課程構成、標準修業年限、取得できる学位、出願資格、修了要件などは大学院や研究科によって異なります。最新の情報は、各大学院の公式サイトや募集要項で必ずご確認ください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。



