
大学院に進学する人はなぜ学び続けるのか?5つの進学理由
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大学院に興味を持ったとき、「大学を卒業した後も、なぜ勉強を続けるのだろう」「社会人になってから大学院へ進学する人は、何を求めているのだろう」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
大学院への進学理由は人によって異なります。大学で学んだ専門分野をさらに深めたい人もいれば、仕事で経験した課題を研究したい人、新しい分野に挑戦したい人もいます。また、将来の仕事に必要な知識や能力を身につけるために進学する人もいます。
大学院というと、研究者を目指す人が進学する場所という印象があるかもしれません。しかし、研究者になることだけが大学院で学ぶ目的ではありません。自分の関心を深く掘り下げたり、これまでの経験を学問と結びつけたりすることも、大学院へ進学する理由になります。
一方で、大学院に進学すること自体が目的になってしまうと、入学後に何を学びたいのかが曖昧になることもあります。大学院進学を考える際には、学位を取得することだけでなく、その過程で何を得たいのかを整理することが大切です。
この記事では、大学院に進学する人の代表的な5つの理由を紹介します。読み進めながら、自分が大学院に興味を持ったきっかけについても考えてみてください。
進学理由① 興味のある分野をもっと深く学びたい
大学院への進学理由として考えられるのが、大学で学んだ分野や、以前から関心を持っていたテーマについて、さらに理解を深めたいという思いです。
大学の学部では、専門分野の基礎から応用まで幅広く学びます。その中で、特定の授業やゼミをきっかけに、もっと詳しく調べてみたいテーマが見つかることがあります。
例えば、文学部で日本文学を学んでいる学生が、ある作家の作品を読み進めるうちに、作品に描かれる家族観や社会背景について関心を持つ場合があります。
学部の授業では、複数の時代や作家について幅広く学ぶことが多いかもしれません。一方、大学院では、特定の作家や作品群を対象として、先行研究や歴史的資料を調べながら、より深い考察に取り組むことができます。
心理学や教育学、経済学などでも同様です。授業で知った理論について疑問を持ったり、卒業研究で十分に調べられなかったテーマをさらに追究したいと考えたりすることがあります。
ここで大切なのは、「好きな分野だから学びたい」という気持ちを否定する必要はない一方で、その関心をどのように深めたいのかを考えることです。
例えば、日本文学が好きという気持ちから、特定の時代の文学作品が社会の価値観をどのように反映しているのかという疑問が生まれるかもしれません。
こうした問いを持つことで、興味が研究へと発展していきます。
ただし、興味があることと、大学院で研究できることは必ずしも同じではありません。進学を具体的に検討する段階では、その分野を研究できる大学院や指導教員がいるかどうかを調べる必要があります。

進学理由② 将来の仕事に生かせる専門性を身につけたい
大学院で学ぶことを、将来の仕事やキャリアにつなげたいと考える人もいます。
例えば、企業経営や組織運営に関心を持つ人が、経営学を専門的に学ぶために大学院への進学を検討することがあります。また、公共政策に関心を持つ人が、行政や地域社会の課題について学びたいと考える場合もあるでしょう。
大学院では、専門分野の理論や研究方法を学び、課題を多面的に捉える力を養うことができます。
例えば、企業の売上が伸びないという問題を考える場合、経験だけをもとに対策を決めるのではなく、市場環境、消費者行動、組織の仕組みなど、複数の視点から分析する方法を学べます。
大学院での学びは、仕事で使える知識を増やすだけではありません。これまで当たり前だと思っていた考え方を見直し、問題を別の角度から捉えるきっかけになることもあります。
ただし、大学院に進学すれば必ず希望する職業に就けるわけではありません。学位の取得が採用や昇進にどのように評価されるかは、業界や職種、企業によって異なります。
そのため、キャリアを目的に大学院進学を考える場合は、学びたい内容だけでなく、修了生の進路や身につけられる能力についても確認することが大切です。
例えば、特定の資格や専門職への就職を目指す場合は、その大学院の課程が必要な要件に対応しているかを調べる必要があります。一方、幅広い思考力や専門性を身につけたい場合は、授業内容や研究環境を重視する選び方も考えられます。
大学院進学は、就職や転職の結果を保証するものではありません。自分が目指す将来に対して、大学院での学びがどのような意味を持つのかを考えることが重要です。
進学理由③ 仕事で感じた疑問や課題を研究したい
社会人が大学院への進学を考えるきっかけとして、仕事を通じて生まれた疑問があります。
日々の業務では、目の前の問題を解決することが優先されます。しかし、仕事を続ける中で、「なぜこの問題が繰り返されるのだろう」「別の方法はないのだろう」と感じることもあるでしょう。
例えば、企業で人材育成を担当している人が、同じ研修を受けても、その後の行動が変わる社員と変わらない社員がいることに疑問を持ったとします。
職場では、研修内容を改善したり、上司によるフォローを増やしたりするなど、実務的な対策を検討するかもしれません。
一方、大学院では、学習意欲や組織行動、人材開発に関する先行研究を調べながら、研修後の行動変化に関係する要因を研究課題として検討することができます。
教育現場で働く人が学習支援の方法を研究したり、自治体で働く人が地域政策について学んだりすることも考えられます。
社会人が大学院で学ぶ意義の一つは、これまで経験してきた問題を、個人の経験だけで判断するのではなく、学問的な視点から捉え直せることです。
例えば、職場で起きた問題について、自分は特定の原因があると考えていたとしても、関連する研究を読むことで、別の要因が関係している可能性に気づくかもしれません。
ただし、実務経験をそのまま研究の結論にすることはできません。自分が経験した事例を、他の研究や客観的な資料と照らし合わせて考える必要があります。
仕事で感じた疑問を、学術的な問いへと発展させることができる点は、社会人が大学院で学ぶ魅力の一つです。

進学理由④ 新しい分野に挑戦したい
大学院への進学は、これまで学んできた分野をさらに深めるためだけのものではありません。新しい分野への関心が、進学のきっかけになることもあります。
例えば、大学では経済学を学んでいた人が、社会人になって教育に関心を持ち、教育学の大学院への進学を考える場合があります。
また、企業で営業や企画の仕事を経験した人が、情報技術やデータ分析について学びたいと考えることもあるでしょう。
異なる分野へ進学する場合、これまでの知識や経験が新しい学びに役立つこともあります。経済学で学んだ統計の知識が、教育政策の分析に生かせる場合も考えられます。
このように、異なる分野で身につけた知識や経験を組み合わせることで、新しい問題意識が生まれることもあります。
一方、分野を変える場合には、専門知識の不足が課題になることもあります。
例えば、心理学の大学院では、心理学の基礎知識や研究方法について理解していることが求められる場合があります。情報学の大学院では、数学やプログラミングなどの知識が必要になることもあるでしょう。
そのため、新しい分野への進学を考える際には、出願資格や入試科目、入学後の授業内容を確認し、必要な準備を整理することが重要です。
新しい分野に挑戦する際には、これまでの経験をすべて捨てて、一からやり直すと考える必要はありません。過去の学びや仕事の経験が、新しい分野を理解する手がかりになる場合もあります。
ただし、すべての研究科が未経験者を受け入れているわけではありません。興味を持った段階で、進学の条件を具体的に調べてみましょう。
進学理由⑤ 自分の人生を見つめ直し、学び直したい
大学院に進学する理由は、必ずしも仕事や資格、研究者としての将来に直結するものばかりではありません。
社会人として働いてきた人が、これまでの経験を振り返り、改めて学問に向き合いたいと考えることもあります。
例えば、長く企業で働いてきた人が、以前から関心のあった歴史学を学びたいと考える場合があります。また、子育てや地域活動を経験した人が、家族や地域社会について学問的に考えてみたいと思うこともあるでしょう。
こうした進学は、現在の仕事に直接役立つ知識を得ることだけが目的ではありません。
自分が関心を持っていることを深く理解したい、新しい人と出会い、異なる考え方に触れたい、これまでとは違う視点から社会を見てみたいという思いも、学び直しの動機になります。
大学院では、文献を読み、教員や他の学生と議論しながら、自分の考えを深めていくことができます。
学び直しを考える際に重要なのは、大学院進学を周囲に説明しやすい理由だけで判断しないことです。必ずしも転職や昇進につながらなくても、専門的な学びに時間を使うことが、自分にとって意味のある選択になる場合があります。
ただし、大学院での学びには、授業や研究のための時間と費用が必要です。進学すること自体を目的にするのではなく、大学院でどのような時間を過ごしたいのかを考えることが大切です。
学び直しには、大学院以外にも公開講座や科目等履修生などの選択肢があります。自分の目的に合った方法を比較しながら考えてみるとよいでしょう。

大学院への進学理由は一つでなくてもいい
ここまで、大学院に進学する5つの理由を紹介しました。しかし、実際の進学理由は、必ずしも一つに分けられるものではありません。
例えば、経営学に興味がある社会人が、仕事で感じた課題を研究しながら、将来のキャリアにも生かしたいと考えることがあります。
また、大学のゼミで興味を持ったテーマをさらに研究したいという気持ちと、専門性を生かした仕事に就きたいという希望を、両方持っている学生もいるでしょう。
大学院への進学理由は、準備を進める中で変化することもあります。
最初は資格やキャリアを意識していた人が、大学院の教員や研究内容について調べるうちに、研究そのものに魅力を感じるようになる場合も考えられます。
反対に、研究への興味から大学院を調べ始めた人が、進学後のキャリアや生活を考え、別の学び方を選ぶこともあるでしょう。
進学理由を最初から一つに決める必要はありません。自分が何に関心を持ち、何を期待しているのかを整理することから始めてみてください。
進学理由と志望理由はどう違う?
大学院進学を考える際には、「なぜ大学院で学びたいのか」という進学理由と、「なぜその大学院を選ぶのか」という志望理由を分けて考えると整理しやすくなります。
例えば、「企業の人材育成について専門的に学びたい」という思いは、大学院へ進学したい理由の一つです。
一方、「人材開発について研究している教員の指導を受けたい」「組織行動に関する授業や研究環境が自分の関心に合っている」という説明は、特定の大学院を志望する理由につながります。
大学院入試では、研究計画書や面接を通じて、研究への関心や志望理由を確認されることがあります。
そのため、大学院へ進学したい理由を整理することは、将来の出願準備にも役立ちます。
ただし、今の段階で入試用の志望理由を完成させる必要はありません。まずは自分の気持ちを整理し、その後、研究したい内容や進学先について具体的に考えていきましょう。
自分が大学院に行きたい理由を書き出してみよう
大学院への進学理由を考えるときには、頭の中で考えるだけでなく、紙やメモに書き出してみることをおすすめします。
まず、「大学院に興味を持ったきっかけは何か」を考えてみてください。
大学の授業で面白いと感じたこと、仕事の中で疑問に思ったこと、以前から学びたいと思っていたことなど、どのような内容でも構いません。
次に、「大学院でどのようなことを学びたいか」を考えます。
例えば、「人が成長する仕組みを知りたい」「地域社会の課題について考えたい」「企業の経営について体系的に学びたい」といった形で、関心を言葉にしてみましょう。
最後に、「大学院で学んだことを、その後どのように生かしたいか」を考えます。
研究を続けたいのか、仕事に生かしたいのか、自分自身の知的な関心を深めたいのか。まだ答えが決まっていなくても問題ありません。
ここで一つ意識したいのは、大学院でなければ実現できないことがあるかどうかです。
例えば、専門書を読んで知識を増やすことが目的であれば、独学や公開講座でも実現できるかもしれません。一方、専門家の指導を受けながら研究に取り組みたい場合は、大学院という環境が適している可能性があります。
大切なのは、誰かに評価されるための立派な理由を考えることではなく、自分が大学院に関心を持った理由を、自分の言葉で理解することです。
大学院進学の目的は、途中で変わってもいい
大学院への進学を考え始めた段階では、学びたい分野や将来の目標が明確でないこともあります。
しかし、大学院について調べる中で、興味のある研究分野が見つかったり、進学先に求める条件が変わったりすることがあります。
例えば、最初はMBAに興味を持っていた人が、調べるうちに一般的な経営学研究科で研究に取り組みたいと考えるようになるかもしれません。
また、研究者を目指していた学生が、専門知識を社会で生かす仕事に関心を持つこともあるでしょう。
こうした変化は、必ずしも進学への意欲が弱いことを意味しません。情報を集め、自分の考えを整理した結果として、目的が具体化することもあります。
ただし、出願する段階では、研究したい内容や志望先を選んだ理由について、一定の説明ができるようにしておく必要があります。
進学の目的を考えることは、一度答えを出せば終わる作業ではありません。新しい情報や経験に触れながら、自分にとって大学院で学ぶ意味を確かめていくことが大切です。
まとめ|大学院に行きたい理由を、自分の言葉で考えよう
大学院に進学する理由には、専門分野を深く学びたい、将来の仕事に生かしたい、仕事で感じた課題を研究したい、新しい分野に挑戦したい、人生の中で改めて学び直したいといったものがあります。
これらの理由に優劣があるわけではありません。研究者を目指す人も、社会人として専門性を高めたい人も、自分の関心を深めたい人も、それぞれの目的に合った学び方を考えることができます。
ただし、大学院に進学することだけを目標にするのではなく、その先にどのような学びや経験を求めているのかを考えることが重要です。
大学院への進学を考え始めた方は、まず「なぜ大学院に興味を持ったのか」「大学院で何を得たいのか」を自分の言葉で書き出してみてください。
進学理由が少しずつ明確になることで、学びたい分野や自分に合った大学院を探しやすくなります。
次回は「大学院の修士課程と博士課程はどう違う?進学前に知りたい基礎知識」をテーマに、大学院の課程や学位の仕組みについて詳しく紹介します。
※大学院の教育内容、入試制度、出願資格、修了要件などは大学院・研究科によって異なります。最新の情報は、各大学院の公式サイトや募集要項で必ずご確認ください。
志樹舎
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
小杉 樹彦(こすぎ・たつひこ)
志樹舎 創業者/博士(学術)
慶應義塾大学院修了後、2015年1月に院試専門オンライン予備校「志樹舎」を設立。
代表講師として10〜60代まで延べ5,000人以上の受験生を指導。
早慶・国公立をはじめとする難関大学院で合格率9割超の実績を持つ。
現在は大学院入試対策の専門家として、テレビ・新聞・雑誌など幅広いメディアで活動中。
ロングセラー『減点されない!勝論文』(エール出版社)ほか著書・論文多数。



